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〔特集〕

トウモロコシのロールベールサイレージ

岡山県総合畜産センター大家畜部  串田 晴彦

1 はじめに

 岡山県における青刈りトウモロコシの作付け面積は,転作により栽培面積が拡大した昭和62年の2,220haをピークに平成13年には614haと年々減少してきています(図1)。また,酪農経営1戸当たりの作付け面積も平成5年には2.4haでしたが,円高に伴う価格低下で購入飼料が増加し,平成13年には1.2haと半減しています(図1)。その他の減少した主な要因は,@収穫調製作業など,過重な労力を伴うこと,Aイノシシなどによる獣害などが考えられます。
 飼料用トウモロコシは,10a当たりのTDN収量が高く,さらにふん尿の利用を考えても都府県の酪農経営では最も適した作物と考えます。また,県内の栽培方法も,従来のような画一的な方法でなく,刈り取時期が11月下旬であったり二期作を試みたり,それぞれの経営に合った方式が試みられています。総合畜産センターでは,トウモロコシを最も重要な飼料作物として位置づけるとともにこれら地域の取り組みを支援しています。また,遊休農地の増大,ふん尿の利用,持続的農業の推進などを受け,県では「飼料増産推進計画」を樹立し,自給飼料の生産拡大をより一層推進することとしています。
 そこで,畜産センターではこれらの一環として,農林水産省の外郭団体である生物系特定産業技術研究推進機構や民間農機メーカーと共同で,省力かつ効率的な機械体系としてトウモロコシのロールベールサイレージを作る「細断型ロールベーラ」の開発・実用化研究を行ってきて,今年度その実用化に向けて,県内で現地実証試験を行ったので内容について紹介します。

図1 岡山県における青刈りトウモロコシの作付け面積の推移 (岡山県農林水産統計年報より)

2 細断型ロールベーラとは・・・

 これまでのコーンハーベスタで収穫・細断したトウモロコシをロールベールに成形するもので,下記のような目的で開発されました。

 (1) サイロ詰め等の重労働が軽減できること
 (2) 収穫・調製作業を少人数での実施できること
 (3) 調製ロスが少なく,高品質で安定したロールベールサイレージが調製できること
 (4) 急な天候の変化にも対応できること
 (5) できあがったロールベールの解体が容易なこと

 収穫作業は,ワンマン作業(1人での作業),定置作業(ベーラをほ場わきに置き,収穫・細断したトウモロコシを運び,ホイルローダ等でベーラに投入する)及び伴走作業(ハーベスタの横をベーラが伴走する)の3つあります。本県では,そのうちの定置型で実施しました(図2〜7)。

図2 コーンハーベスタによる収穫・細断
図3 細断型ロールベーラへの投入
図4 排出されたロール
図5 ネットにより梱包されたロール
図6 専用ラッパによるラップ
図7 できあがったロール

3 現地実証試験の実施概要及び結果

 おかやま酪農業協同組合と共同で県内4カ所(合計121a)で実証試験を行いました。概要は表1及び2のとおりです。
 調製されたロールは直径は87.1p,平均重量は266.2sで同サイズの牧草ロールの約2倍の重さでした。含水率は刈取りステージがやや進んでいたためか68.9%と低めでした。乾物密度は最高値で高密度に梱包されていました。191.0s/m3の乾物密度(単位体積当たりの乾物重量)とは,高さが5m程度のサイロの底部と同じ圧力で梱包されているといえます。梱包ロス(ベーラからロールが放出されるときにこぼれた量)はできあがりのロール重量に対して1.4%,ラップロス(ラップ時にこぼれた量)は0.2%と少ないものでした。発酵品質もフリーク評価で「優」と良いものでした。
 なお,保存性については現在,成分及び発酵品質についてバンカーサイロとの比較を実施中です。

4 おわりに

 今年度は本県を含む全国7カ所(宮崎,福島(2カ所),群馬,三重,岩手)で実施されました。本県では,平成15年度も今年度と同様の内容での実施を予定しています。