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豚のレプトスピラ感染症について

津山家畜保健衛生所

1 はじめに

 本疾患は Leptospira 属菌の感染によって起こる人畜共通感染症で,母豚では異常産,子豚では黄疸,血色素尿症,貧血などの症状を呈します。異常産は主として妊娠末期に起こり,子豚感染は1〜3カ月令のものに好発します。
 我が国では,L.icterohaemorrhagiae による感染例が最も多く,感染ルートは保菌豚の尿による伝搬(レプトスピラ尿症)のほか,齧歯類の尿による汚染の可能性もあります。
 発生は世界各地で認められ,豚以外にも牛,水牛,鹿,イノシシ,犬などでも発生しますが,我が国では比較的まれです。
 今回,津山家保管内の養豚農家でL.icterohaemorrhagiae による感染例があったのでその概要について紹介します。

2 発生状況

 平成14年11月14日,家保の立入検査で,2頭の母豚を平飼いする豚房床に排泄された血尿を発見しました。
 血尿を示す母豚(No1)及び同居豚(No2)の検温と視診をするも,特に異常は認められませんでした。
 同日2頭の尿を採材し,更に3日後と2週間後のペア血清を採取し検査しました。

3 検査結果

 (1) 血尿の直接鏡顕

 血尿を直接顕微鏡で観察したところ,スピロヘータ特有の動きで活発に運動する多数の螺旋菌が認められました。

 (2) 菌培養

 血尿を血液寒天培地に接種したが,原因と思われる菌は分離できませんでした。
 また,病性鑑定所に依頼し,現在コルトフ培地で血尿と血清を培養中(30℃,3ヶ月間)です。

 (3) 血清の抗体検査

 5種類の血清型について抗体検査を実施した結果,L.interrogans.serovar.
icterohaemorrhagiae に対して有意な抗体上昇がみられました。L.icterohaemorrhagiae に対する抗体価は次のとおりでした。

 これらの結果からレプトスピラ感染症と断定しました。

4 予  後

 11月14日の発見以来数日間の血尿を呈したものの,予後は比較的良好で現在までに特異な症状はみられていません。

5 おわりに

 豚レプトスピラ感染症の多くは不顕性感染で,一般に本病が確認された時点でその豚群には以前から長期にわたって流行していたものと考えられます。臨床所見のみで本病を診断するのは困難ですが,抗体価が100倍以上の場合は感染していると考えられます。異常産の産出は繁殖農家にとって経済的損失が大きいため,予防としては感染豚の早期淘汰と舎内消毒の徹底が望まれます。