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〔地域情報〕

耕種農家の堆肥利用に関する実態調査

勝英地方振興局農林水産事業部畜産係

1.はじめに

 「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」の完全施行に向け畜産農家等では,堆肥舎などの家畜排せつ物の処理施設の整備が進んでいます。整備が進めば生産される堆肥は増加し,堆肥の利用と販売の促進が大きな課題となります。
 勝英地域では勝央町,奈義町,勝北町の3町で畜産環境基本調査を実施しており,その中で農家調査を行いましたので,耕種農家の堆肥利用に関する調査の集計結果を紹介します。

2.調査方法など

 1)調査地域の概要

 3町の農業概況は表1・2のとおりで勝央町,奈義町は特に畜産の盛んな地域です。農産物では,各町とも米,大豆の生産が多く特に黒豆を中心とした大豆は3町で575haと栽培が盛んな地域です。
 また,勝央町と奈義町には広域の堆肥センターがあり,堆肥生産と併せて散布作業も行っています。

 2)調査対象

 調査農家は,畜産農家を除く耕種農家の認定農業者を対象とし,勝央町・奈義町・勝北町でそれぞれ35戸・23戸・15戸の計73戸です。

3.集計結果

 1)堆肥の利用状況

 堆肥を利用している農家は3町合計で89%ですが,勝北町は,71%と低く2町は90%以上でした。利用していない農家は7戸で,その理由は,「必要ない(稲わらで充分を含む)」が4戸で,他の理由は「入手しにくい」・「機械が無い」等でした。

 2)堆肥の家畜別種類

利用している堆肥の家畜別種類(複数回答)は,乳用牛(85%),肉用牛(45%),採卵鶏(9%),豚(7%)の順で,利用形態は,バラ(98%)がほとんどでした。(図1)

 3)入手方法

 入手方法は,「農協を通じて」(75%)が多く,次いで「直接農家から」(45%)でした。町別では,堆肥センターの無い勝北町では,「農協を通じて」は少なく,「直接農家から購入する」(89%)が大半でした。(図2)

 4)利用量と価格

 1戸あたり年間の利用量は,「20t未満」(58%)が多く,次いで「20〜40t」(27%)でした。購入時期は,春(60%)と秋(58%)が多く次いで,冬(31%)で,夏(16%)には利用する農家は少く,町による違いは認められませんでした。
 有料で購入している場合はt当たり「4,000〜5,000円」(40%)が多く,次いで「2,000〜3,000円」(11%)でした。

 5)利用方法

 堆肥散布は,「運搬・散布とも委託」(51%),「運搬は委託・散布は自力」(26%)で,外部に頼っている農家が多くなっていました。
 堆肥センターによる散布のない勝北町は,「運搬・散布とも自力」(33%)が多くなっていました。(図3)

 6)堆肥への要望

 耕種農家が堆肥に望むことは,「堆肥の品質」(63%),「堆肥成分の安定」(52%),「散布作業委託」(27%)が多く,「値下げ」(20%)は多くありませんでした。

 7)堆肥化施設の設置

 高品質堆肥の生産と適期施用のための耕種農家自身によるストックポイントや堆肥舎の設置については,「是非やりたい」(7%),「条件によってはやりたい」(33%)と関心がありました。特に,勝北町では,「是非やりたい」(27%),「条件によってはやりたい」(55%)と非常に意欲が高くなっていました。

4.まとめ

 耕種農家の多くは,堆肥を利用していますが,その利用割合は散布体制が整っている地域は高くなっていました。利用量を増やしていくためには,散布体制をいかに整備するかが課題です。
 耕種農家が堆肥に望むことは,「品質(充分な腐熟)」や,「堆肥成分の安定化」ですので,完熟槽・ストックヤードの整備や,堆肥成分分析の頻度を増やすとともに,生産利用に関する情報を直接提供していくことが求められています。
 また,耕種農家側も,畜産農家で1次処理した堆肥を充分腐熟させて適期に施用できる施設の整備を検討しています。


肉用牛農家による堆肥散布(勝北町)