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〔地域情報〕

酪農個人経営の近代化に成功!
川上牧場(成羽町)

岡山県高梁地方振興局畜産係

1.はじめに

 川上牧場は成羽町南部に位置する丘陵地にあります。
 牧場経営は,夫婦,次女及び長男の4人で行っておられます。驚くほど綿密な簿記記帳,夫婦間での家族経営協定の締結,後継者にも給与と賞与,休暇を与える,機械化により酪農経営の近代化を図るなど,個人経営でありながらも家族という名の法人経営を見事に確立,運営されています。

 家族構成 経営主 川上治芳 55
        妻 川上和恵 54
        子 長女(公務員)
          次女(川上牧場勤務)
          三女(会社員)
          長男(後継者川上牧場勤務)

2.農場の足跡

 経営主の治芳さんは,昭和41年に高校を卒業後,父親の後を継いで42年に就農され,翌年に後継者資金で12頭の繋ぎ牛舎を建築されました。
 昭和48年,奥様和恵さんと出会い,スピ−ド結婚。非農家だった和恵さんは,治芳さんが知らぬ間に酪農技術をマスターしていったそうです。
 平成7年,担い手育成畜産基盤総合整備事業でフリーストール・ミルキングパーラーシステムを導入し,80頭搾乳体系の本格的酪農をスタートされ,平成13年には畜産環境保全施設整備事業で堆肥舎を整備し,適切な糞尿処理を行っておられます。
 育成牛は,美星町公共育成牧場で預託していましたが,平成15年3月末で閉鎖が予定されていたため,農業経営基盤強化資金を活用して哺乳ロボットを備えた哺育育成牛舎を新設し,月齢別育成を実施しています。

3.飼養管理

 平成14年度に農業制度資金を活用して県下ではまだ導入事例の少ない哺乳ロボットを導入し,省力的な哺育・育成を行っています。哺乳ロボットの導入まで子牛の授乳は,生後7週間の離乳まで手のかかる作業でした。
 現在,母乳を与える生後1週間までは人手がかかりますが,あとはロボットにお任せ。浮いた時間で育成牛・成牛の健康管理を今まで以上に行っています。ロボットは配合飼料の摂食量によって乳の量が減る設定になっており,一定の条件で離乳できます。さらに哺育・育成の全課程で配合飼料の定量給餌と良質粗飼料の飽食を行っており,頭数が多くても均一に丈夫な腹作りができるようになっています。
 こうして育成された搾乳牛は,TMR給与方式により飼養管理されており,現在,平均乳量は9,300キロと県内でもトップクラスの成績です。
 個体管理は,コンピューターで行うと同時に,日々の観察も細やかです。
 また,共同作業による自給飼料生産で経営の低コスト化が図られています。

4.これからの川上牧場

 非農家出身ながら自らの努力で酪農経営のプロとなり農林漁業功労者表彰を受賞されるまでになった和恵さん。人望厚く各種役職につかれ,忙しい身ながら家族を温かく見守る治芳さん。2人の後姿に学び,次女智代さんと昨年就農したばかりの長男拓郎さんが父を追い越し更にすばらしい経営手腕を発揮し牧場を発展させていくでしょう。
 御夫婦の夢は,長期旅行を2人でゆっくりされることとお聞きしていますが,その夢も近い内に実現できるように思われます。

5.終わりに

 近年,畜産分野でも経営感覚に優れ,直売などに取り組む経営体が増えているなか,川上牧場においては,綿密な簿記記帳を休まず続けて自己の経営を分析し,問題点を発見して積極的に改善していくという当たり前のことを着実に実行され,足腰の強い経営を実現されています。補助事業や制度資金も自己の経営をしっかり把握したうえで活用して初めて大きな成果につながるのだということを改めて感じました。今後もますますのご発展をお祈りしています。