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〔共済連便り〕

家畜診療日誌

岡山中部家畜診療所 次長 亀森 泰之

 大きな総合病院に行った時,内科とか外科とか放射線科などそれぞれの科に分かれているが,そこに居る医師たちは一人の患者に対して検査データとか処置の内容をどのように扱っているのだろうかと考える。カルテは当然書いて送るだろうということは想像できるが,それだけでは本当に詳しい内容までは記載できないのではないかと不安に思われる。患者の容態に関して,お互いの医師同士で話し合いをしているのであろうかとか,医師と看護士の連絡は綿密に行なわれているのであろうかなどということを想像することがある。我が診療所において考えてみた時,我々獣医師は小動物に至るまで人間の病院のように,それぞれ専門分野の診療を行うことが少なく,一頭の牛に関して,内科から繁殖障害まですべての項目を検査し治療するため,詳細な診療はできないかもしれないが,毎日診療に出かける前,あるいは診療所に帰ってから難しい病気の牛についての討論会が気兼ねなく何時でもできる。そうすることで少ないデータから読み取り難いことも多くの人の意見を集めることにより,いろいろと治療法も考えられ,難病の早期治療に役立ってきたと思われる。そして多くの患者を診る人の病院においては,いろんな分野の医師たちが毎日一人一人の患者に関して討論会をすることなどできないことは分かっているが,そうなればお互いの深い専門知識とデータの上に何人もの意見を寄せ集めることができ,速やかな診断と治療ができるのであろうなと考えることがある。
 私は,20年以上の牛の診療経験を持って現在の診療所に赴任して面白いことに気づいた。この診療所の管内は,家畜保健衛生所,振興局,普及センター,町役場,酪農組合,共済組合,酪農家そして家畜診療所の連携が密に保たれており,お互いの情報を気軽に連絡しあっていた。その連絡しあえる場として,御津酪農研究会,建部町乳牛ドックそして加茂川町ストックファームでの酪農家を含めた関係団体との懇親会など地域に輪をもたらす行事と,家畜保健衛生所が中心になって行なっている搾乳立会,乳房炎乳のサンプリングおよびトラブルシューティングなどがあり,いろいろな専門分野の知識を持つ酪農関係機関の職員が常に顔を会わす機会が多いことであった。酪農家の縁の下の力持ち的仕事をしている人達が関連する話題を持てば自ずと親しみが沸き,ひいては一つの大きな組織のようになってきているようにも思われる。例えば乳房炎対策に関しては,まず関係機関が出席した会議の場で農家へ搾乳方法や乳房炎治療などの説明会を開き,その後日程を調節し,乳房炎乳のサンプリングそして家畜保健衛生所にて感受性試験と細菌の同定を行なう。そしてその結果を基に診療所が治療を実施するという基本的なことであるが,昨年における実績として黄色ブドウ球菌による治療に関しては大きな効果が認められ,その後も継続されている。
 農家が在っての関連組織である以上,大きな総合病院のごとく数知れない人を相手にするのではないのであるから,難問を抱えている農家に対してお互い専門分野の知識を持って手をつなぎ合い輪を作り,農家の経営安定に組織協力体制で望むのがお互いの生きる道であると思われる。