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〔特集〕

牛肉トレーサビリティー法が公布されました。

岡山県農林水産部畜産課

 「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」がさる6月11日付けで公布されました!

1.農林省関係の食品安全5法が成立

 いわゆる食品安全5法と言われている次の法律がこのたび公布されました。
 5法は@牛肉トレーサビリティ法(牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法),A農水省設置法改正,B食品の安全性確保のための農水省関係法の整備法,C飼料の安全性の確保及び品質改善に関する法律の一部改正,DHACCP支援法改正案(食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法改正法)―で,「消費・安全局」を新設する農水省設置法などは,7月1日,牛肉トレーサビリティ法については生産段階のものについては平成15年12月1日から,流通段階のものについては16年12月1日から施行される予定になっています。特に新しい組織として「食品安全委員会」が設置され,中立的な立場から安全について勧告などを行なうようにしていることと,従来の食糧庁が廃止され,本省サイドでは「消費安全局」地方では「地方農政事務所」が食品の安全対策を行なうように組織の改正がなされました。

2.牛肉トレーサビリティー法の概要

 トレーサビリティーとはトレース(追跡する)+アビリティー(能力)の合成語で従来は製造から消費者までの物流の追跡(川上から川下へ)でしたが,食肉については消費者から生産者迄の安全性の追求(川下から川上へ)が重視されています。
 今回の法律の概要は下図のようになっていますが,科学的な根拠によって同一性を確認するためのDNA鑑定を行なうなど,個体識別番号で一元管理するとともに,生産・流通・消費の各段階で履歴を追跡できる制度を構築するものとして期待されています。
 とくに,牛肉の安全性に対する信頼回復を図るため,国内で飼育されている全ての牛に戸籍にあたる「個体識別番号」を記入した耳標を付けて管理し,消費者がインターネットで生産・流通履歴が判る仕組みを作る法律です。

 (1) 生産段階では牛を飼う酪農・肉用牛の農家は子牛が生まれたときに国(家畜改良センターが管理)に出生年月日,品種性別,牛の個体番号の届出が義務づけられます。同時に家畜改良センターが発行する耳標の装着も義務づけられ,耳標の取り外しや耳標の無い牛の売買も禁止されます。
   牛を販売したときは,販売先や年月日の届出も義務づけられます。耳標の装着や届出をしなかった場合には,最高で30万円の罰金が科せられます。

 (2) 流通段階では,牛肉を扱う食肉流通業者,スーパー,精肉店のほか,焼肉,すき焼き等の外食産業者に対しても個体識別番号の正確な伝達や表示が義務づけられます。違反者には生産段階と同様に最高で30万円の罰金が科せられます。

 (3) 対象となるのは国産の牛肉で,挽き肉や切り落とし肉,コンビーフ等の加工品は除かれます。大体国産の7割程度がこの制度の対象になると考えられています。
   制度の適正な運用を確保するために,と畜場では全ての枝肉からDNAサンプルを採取して,店頭に並ぶ牛肉の表示が正しく行なわれているかどうかを確認するようにしています。

3.今後の課題

 (1) コスト負担:牛に装着する耳標や管理費を始め,今後これらのシステムを円滑に推進していくために必要なコスト負担をどうするのかという事が大きな問題となっています。

 (2) 輸入牛肉の生産履歴表示をどうするか:輸入牛肉については,今回の法律の対象にはしませんが,農林水産省としては改正JAS法で輸入年月日@出生の年月日,A雌雄の別,B品種,C所有者の氏名と住所,D飼養場所と飼養を始めた年月日,Eと畜年月日,F飼料の名称,G動物医薬品の名称,等の項目をもって対象とすること等で検討がなされているようです。

4.おわりに

 消費者に安全で安心な食品を届けるには,単にシステムが出来ただけでは何にもなりません。まず第1には生産者の皆さんが確実に生産された子牛に耳標を装着し,センターに報告することが大切です。また,移動の際の報告についても同様で,農家・家畜商・市場など関係者みんなの一致した協力が不可欠です。このことにより,正しい情報が消費者に届き,信頼を得ることになります。
 もちろん,この法律には最高30万円の罰金という罰則規定がありますが,それよりもまず,このシステムを関係者が一丸となってもり立てていくことが,消費者に私たちが生産する生産物を理解してもらい,WTO交渉に打ち勝ち,海外からの輸入畜産物と対抗できる体制をつくる大きな手がかりになると考えられています。