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〔技術のページ〕

乳牛の繁殖管理について

岡山県総合畜産センター 大家畜部酪農飼料科 専門研究員 秋山 俊彦

 泌乳能力の向上については,これまでスーパーカウなどと表現されるように,生産者を始め関係者全員がその能力アップを評価しているところです。
 特に若い牛(初産及び2産)の乳量の増加は著しく,15年前の昭和60年を100とすると,130と3割も能力が向上しています。

 このように,泌乳能力は急速に向上しているなかで,繁殖に関しては図に示すとおり,年々悪化しています。

 分娩間隔の推移を見ると,都府県のデータでは平成12年に437日となるなど,一年一産など夢物語のようにも思える状況となっています。そこで具体的に乳牛の繁殖を行ううえでの大きな問題をあげてみると

◎発情がはっきりしないので見つけられない
◎人工授精をしても,なかなか受胎しない

 といったことがあげられます。
 授精を行おうとしても,発情がよくわからないため,人工授精ができなかったり,受胎率についても,日本家畜人工授精師協会調査による平成10年のホルスタイン種の受胎率が46.5%と50%を割っている状況です。
 発情が見つけられない原因として,発情兆候があるのにこれを見逃している人間サイドの問題,発情兆候が弱いなど牛側の要因もありますが,一般には多くが見逃しであると言われています。また,最近の傾向として牛の発情徴候が弱く,これは高泌乳化を目指した改良によるものだとの意見も聞きます。確かに発情が弱くなったと感じている酪農家の皆さんも多いようです。

『発情発見率を高めるためには』

1.発情の同期化

 発情の同期化は,時期が予測できるので,その時に集中して発情発見を行うことができます。その結果,発情の見逃しが少なくなったり,授精作業の省力化に繋がります。
 飼養頭数の増加等につれてこの技術の活用が一層注目されつつあります。

2.対象牛の集中管理

 多頭化により搾乳作業や飼養管理作業に多くの時間が費やされ,発情発見のための時間が少なくなってきています。そこで,発情してくる牛を重点的に観察する必要がでてきます。すなわち,対象牛だけをシステムとして管理する手法で合理化しようとする考え方です。泌乳ステージごとに繋いで管理することは,飼料給与その他管理作業の省力化にも繋がります。
 畜産センターでは,このような泌乳ステージをベースとした,繁殖に重点をおいた飼養管理法について検討を行っています。
 そして,これらの手法について場内と酪農家での実証試験として本年度から取り組んでいます。

 乳量が増加するにつれ,繁殖管理は難しくなるのは当然ですが,10,000s以上の成績を続けている酪農家の存在は,適正な飼養管理を行うことにより繁殖成績と高泌乳との拮抗関係を克服できる可能性を示唆しています。まずは,発情発見率を向上させるためにそれぞれの経営で具体的な取り組みを開始することが必要です。