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〔普及現場からの報告〕

千屋牛復興にむけての取り組み(新見市)

阿新農業改良普及センター 森山 靖成

 新見市内の和牛繁殖頭数は高齢化などから,年々減少傾向にあり,10年前の約半数の433頭です。これ以上の飼育頭数減少に危機感を持ち,農家と関係者で知恵を出し合い,和牛王国の復興と観光を結びつけた地域振興をめざしています。

1.新見市内の和牛ネットワークの概要

 新見市井倉地区の和牛繁殖農家5戸(飼育規模は5〜23頭)は,平成11年以降生まれた子牛すべてを分娩後3〜5日程度で親牛から分離し,カーフハッチ等で人工ほ育を実施しています。
 この方式を始めてから4年目を迎え,下痢対策等の子牛管理技術がほぼ確立できています。この技術での成育成績は,母子同居の子牛と比較しても遜色ないことが確認されていることから,市内千屋地区で生まれた子牛の預託システムを平成15年3月からスタートさせ,千屋牛の増頭への第一歩を踏み出しました。
 この2地区間において,井倉地区では,ほ育〜肥育もと牛づくりまでの8月間を担当し,子牛を預託した千屋では,繁殖及び肥育に専念するとともに,牛舎改造などを施し,繁殖牛の増頭が見込める仕組みとなっています。

2.和牛繁殖経営の新技術「超早期母子分離方式」とは?

 和牛繁殖経営では,子牛の下痢が発育不良の大きな要因であり,繁殖成績の向上とともに重要課題になっています。この対策として,阿新地域では「超早期母子分離方式」が導入されています。
 超早期母子分離方式は,従来母子同居で母牛に子牛育成をまかせていたのを,分娩後すぐに(3〜5日)母子を分離して人工ほ育(75〜90日齢で離乳)により子牛育成をする方法です。
 平成15年7月現在,6頭の千屋地区産の子牛が井倉地区ですくすくと元気に育っています。


図1 従来の方式と超早期母子分離方式の比較

 <超早期母子分離方式のメリット>

 (1) 子牛の下痢減少
 (2) 発育揃いの良い成育
 (3) 母牛の繁殖成績向上
 (4) 治療費の節減
 (5) 子牛の扱いやすさ


写真1 カーフハッチで人工哺育


写真2 千屋牛ブランドロゴ

3.千屋牛増頭に向けての座談会を終えて

 6月2日豊永を皮切りに19日の千屋地区まで,7つの畜産振興会単位で開催し,千屋牛の増頭対策についての意見交換を農家と指導機関の間で行いました。
 今まで規模拡大ができなかった理由については,牛舎からの糞搬出が重労働で,稲わら確保の難しさにあることが座談会を通じて明らかになり,省力化のための放牧推進に対する条件整備を訴える声も出されました。
 普及センターとしては,和牛飼育と水田農業との有機的連携で,飼料自給率を向上させる方策の提案や,人工ほ育技術及び電機牧柵等の利用による放牧等の有利性についてのPRなどを通じて,千屋牛増頭に向けての誘導を図っていきます。

4.新しい施策

 阿新管内の繁殖牛頭数は1,089頭。内新見市分は433頭(H14.8.1家保調べ)。飼育農家の高齢化と担い手不足により10年前と比べて約半数になっています。
 地域振興策として千屋牛のブランド化と放牧和牛の景観保全を掲げている市役所では,今年度,既存の補助事業に加え独自で千屋牛の保留及び増頭に対する事業を興し,和牛飼育農家に元気が出る施策を計画しています。