ホーム > 岡山畜産便り > 岡山畜産便り2003年9月号 > 自然が好き・泥が好き・豚が好き・・・

〔地域情報〕

自然が好き・泥が好き・豚が好き・・・

津山地方振興局農林水産事業部農業振興課畜産係

1.はじめに

 国内発の牛海面状脳症の発生以降,『食』の安全・安心に対する関心がより一層高まり,農林水産物の生産,流通については,消費者に視点を置いた取り組みが各方面において実施されている。一方,県においては,1次産業である農業に加工,流通といった2次,3次産業の機能を複合させた6次産業化の推進と,自分たちの住む地域で作られたものを,その地域で消費する地産地消の推進を図り,生産者の顔が見える農林水産物の提供から農林水産業の活性化並びに食の安全・安心対策に努めているところです。
 こうした中,津山地域において,豚の飼育,生産,加工及び販売を業務とする有限会社日笠農産の経営概況を紹介します。

2.経営概況

 津山市上田邑に本店を持つ有限会社日笠農産の社長を昭和59年に継承した日笠瑛十郎氏のモットーが,『安定したゆとりある農業経営』ということで,昭和58年にハムの加工を開始されて以降,当社で生産される豚は全て社内において,精肉あるいは,ハム等にし,さらに直営レストランで直にあじわっていただく一貫経営に至っています。

図 (有)日笠農産業務体系

 加工を始められたきっかけには,開始当時県内では豚の生産から加工までの一貫経営の例はない中,地域において加工品に対するニーズがわき上がり,社長自らが研修を重ね加工品の製造を開始されたとのことです。「地域で生産されたものは,地域で消費する」という現在の『地産地消』をこの当時から実践されてきたわけです。地域のニーズがあって,それに応える形で経営のスタイルを整えてこられたもので,「地域の方々のニーズや提供したものへの素直な反応が経営への大きな助けになった。」と『地域に根ざした経営の大切さ』が社長のことばの節々にうかがえました。
 また,「豚肉の食べ方を提案する。」という意味も込めて,レストラン『ラント・レーベン』を開業され,育てる喜び,造る楽しさ,創造する感動をレストランでの食材提供,加工研修を通じて伝えて行きたいい気持ちが強く感じられました。

一宮店 精肉・加工品販売

3.今後の展開方向

 「農家本来の生活スタイルを軸にした経営」を理念とし,初代社長から引き継いだ経営を現在まで展開してこられ,本年度から息子さんも後継者として黒豚生産現場に携わっておられ,この理念は継承していきたいとのことです。
 現在,レストランで提供しておられる食材については,米,豚肉はすべて自家産のもので対応しており,今後,卵,野菜並びに小麦といったものに手を広げて,自家産対応のウエイトを高めていこうと考えられております。
 また,加工品については,売れ筋(ニーズ大)を中心とした新製品の展開を,加工技術者が集う県畜産物加工技術研究会,地域のニーズ等から得られる新しい発想から商品づくりを進めて行かれるとのことです。

4.おわりに

 今日の畜産は,高齢化,後継者不足並びに環境問題等経営面では多くの課題を抱えながらも,『食』に対する消費者意識が急速に高まる中で,これからの畜産が歩む方向が明確に打ち出されているとも言えます。
 地域の需要量や消費者の心を素直に取り入れた「地域に根ざした経営」,全県的に取り組んでいる地産地消運動と合わせて,将来の飛躍が期待されます。