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〔共済連便り〕

家畜診療日誌

岡山西部家畜診療所 山本 幹男

 前回の投稿要請も残暑の9月であった。原稿の発行は10月で夏の暑さは峠を越した初秋の候であるが,あえて暑熱対策について書いた。
 今回も同じ9月に原稿要請があり暑熱について書かざるを得ない。というのも毎年やってくる夏が猛暑であろうと冷夏であろうと気温・湿度の上昇,また台風などの気圧の変化は,特にホルスタイン種にとって大変なストレスである。そのため我々獣医師は,梅雨の頃から残暑の今頃まで多量の補液剤を診療車に積み込み飛び回わらなければならないからである。しかし治療効果は思わしくなく熱射病様の鬱熱症状は生体機能を低下させ,抵抗力を奪いさまざまな疾病を引き起こす。一見健康に見える牛でも粗飼料の採食量低下などによる乳質の低下が見られ,それらの対応は解決策が困難で頭の痛い問題である。このようなことから暑熱対策は酪農経営にとって重要な問題であると考えざるを得ない。
 西部家畜診療所(高上川農業共済事務組合)管内の今年の夏の傾向は長期予報で冷夏であるというとおり,初夏の梅雨時期は気温は上がらなかったが湿度が高く,8月も曇りがちであった。熱射病の発生は熱帯夜が少なかったためか発生しなかったが鬱熱による体温上昇はみられ,種々の疾病の下地となり病勢を悪化させた。9月に至り残暑が著しく,特に分娩牛は体温上昇のまま解熱せず体力の消耗が激しく,治療は困難を極めている。その結果,ダウナー症候群,関節周囲炎,乳房炎等の発生件数が増加,ひいては廃用件数の増加となった。
 暑熱対策について周知のことであるが記述する。給与飼料は高温時には飼料摂取量が少なくなるのでエネルギー含量が高く,利用効果の高い高エネルギー飼料(脂肪酸カルシウムなど)が必要となる。また蛋白質の要求量は高温時に増加する傾向があるので飼料中の蛋白質の含有量を高める必要がある。しかし蛋白過給は体内での熱量を大きく発生させるので非分解性蛋白質割合の高い加熱大豆,コーングルテンミールなどが有効である。夏季の乳成分,特に乳脂率の安定を図るには繊維含量が重要である。ビタミン,ミネラルの添加も重要で繁殖成績の向上,体細胞数の減少に必要である。気温が上昇すると生体内の水分蒸発が高めるため飲水量が増加する。体内からの水分排泄の増加はミネラルの排泄の増加にもつながり中でもカリウム,ナトリウムの損失が目立つ。また血中カルシウム,リン,マグネシウム濃度が低下するのでミネラル補給も重要である。飼料給与方法としてはTMR調整給与が基本である。粗飼料が2~3㎝に細断され,混合精度が高められ選び食いが防げるからである。また給与回数を増やすことでルーメン発酵が安定する。夏場の夜間は気温が昼間より低下するので採食で発生した熱を放散しやすいので乾物摂取量が期待できる。
 牛舎環境の面では昔から送風機があったが,最近はその型が大きく設置数も多くなった。24時間送風することで乾物摂取量が約9.5%,乳量で約14%増加したという報告がある。朝の搾乳時に牛体が熱い,呼吸が速いなどの症状が見られるようになったら24時間送風して最大限体熱放散を促してやる必要がある。
 往診時牛舎に入った瞬間室温を肌で感じる。悪臭が無い涼しい牛舎の牛はゆったりしていて反芻は1度に60~70回噛む。そういう牛を見ると私はほっとする。牛も幸せに違いない。
 今は10月,初秋~初冬にかけ夏のストレスから開放され,採食量が増加し,体力が回復する。繁殖能力が向上するがこの時期受胎すれば分娩時期は当然夏場になる。暑熱対策をできることから1つでも実施しないと来年も同じ暑熱病に悩まなければならないので日々の観察に心がけ早期発見,早期対策をお願いしたい。