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〔技術のページ〕

おかやま黒豚の肉質向上をめざして

岡山県総合畜産センター環境家畜部 中小家畜科 技師 佐野 通

1 はじめに

 岡山県が黒豚(バークシャー種)の飼養を開始したのは,昭和53年度に,鹿児島県から当時の酪農試験場(津山市)へ種豚を導入したのが始まりです。その後,平成8〜10年度には黒豚の原産国である英国より,さらに,平成13〜15年度には国内の衛生的に優れた種豚場より導入を行っています。そして,導入した種豚を,総合畜産センター(以下 当センター)で繁殖及び改良し,生産者に種子豚(繁殖用育成豚)及び人工授精用の液状精液を供給することで「おかやま黒豚」の生産振興を図っています。

2 研究目的

 平成14年度に,おかやま黒豚銘柄推進協議会が中心となって,岡山県営食肉地方卸売市場に出荷された「おかやま黒豚」の肉豚の枝肉調査を実施しました。その成績が図1〜5です。図1は,ロース断面積の大きさを示し,平均値は去勢豚が27.1±2.30f,雌豚が26.6±2.33fです。去勢豚,雌豚ともにバラツキが大きいことが分かりました。図2及び3は,去勢及び雌豚の格付け成績を示しました。上物率は去勢豚45.1%(n=865),雌豚73.7%(n=779)と去勢豚と比較して雌豚で優れた成績でした。図4及び5は,上物以外と評価された肉豚の格落ち理由を示しました。去勢豚,雌豚ともに背脂肪厚・被覆での格落ちが理由の半数以上を占めています。背脂肪の厚さは黒豚の品種的特徴でもありますが,著しく厚いものも散見されます。そこで,当センターでは,平成15年度からこれらの問題点を解決し「おかやま黒豚」をさらに地域特産豚として振興するため,「おかやま黒豚」の飼養技術試験を行うこととしました。


図1 ロース断面積

図2 格付け成績(去勢豚)

図3 格付け成績(雌豚)

図4 格落ち理由(去勢豚)

図5 格落ち理由(雌豚)

3 試験概要

 本試験では,枝肉の品質を安定化させ市場価値を高めるとともに,付加価値を加えた飼養方法を確立し,おいしい「おかやま黒豚肉」を消費者に供給することを目標としています。そこで,平成15年度の試験は「LYS(リジン)/ME(エネルギー)比に重点を置いた赤肉生産率の向上」を目的として,枝肉の品質の安定化に取り組んでいます。豚の体内で合成できない必須アミノ酸は10種類ありますが,穀物を主な飼料資源としている豚の飼料ではリジンが第一制限アミノ酸となっています。したがって,飼料中のリジンが欠乏した時点で,豚の赤肉生産は中止され,残りのアミノ酸は尿中へ排泄されて,過剰なエネルギーは脂肪として蓄積されてしまいます。そこで,豚のリジン要求量を把握し,それに見合ったリジンを飼料に添加することで,エネルギーを過剰な脂肪蓄積にまわすことなく,最も効率よく赤肉に転換することが出来ます。調査項目は,DG及び飼料要求率の他に,超音波家畜生体肉質測定装置によりロース断面積及び背脂肪厚の測定,枝肉のロース部位を用いた肉質成分分析等を実施しています。
 今回の飼養試験成績より,「おかやま黒豚」肉豚のリジン要求率を推定し,最適なリジン量を飼料に添加することで,枝肉の品質の安定化が図れると考えています。