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〔普及現場からの報告〕

耕作放棄地を活用した牛の簡易放牧の広がり

津山農業改良普及センター

(概  要)

 津山地域においても,他の地域と同様に,農家の高齢化や労働力不足により,耕作放棄地面積が年々増加しています。
 これら耕作放棄地の省力的な景観保全対策として,牛などの家畜を活用した簡易放牧が各地で脚光を浴び始めていますが,ここ津山地域でも,牛がストレス無く健康的に飼えること,足腰が強くなり繁殖性が改善されることなどのメリットもあるこの簡易放牧(電気牧柵利用)への取り組みが,広がりを見せているので紹介します。

○「津山ニュー農パーク」構想予定地

 市が管理する予定地(約11ha)で,9月24日から放牧を開始しました。これは,この予定地の景観保全を図ることと,耕作放棄地の有効活用方法を模索するための技術実証として市が行ったものです。予定地のうち約30aを電気牧柵で囲み,和牛2頭(ともに成牛)を放牧しました。放牧牛は地元和牛組合からのレンタルです。
 順々に電気牧柵を移動させ,3カ所計約70aで放牧した後,11月中旬に退牧し,現在は予定地とは別の水田耕作放棄地で放牧しています。

○柵原町安井地区

 津山市の酪農家の提案で,耕作放棄地の景観保全を目的に柵原町安井地区の水田(約20a)に電気牧柵を張り,乳用牛の育成牛2頭を放牧しています。第1回目の放牧は7月8日から開始し,約4週間後に退牧しました。第2回目の放牧は10月8日から開始し,11月上旬まで放牧を行いました。現在は,きれいになった耕作放棄地に,イタリアンライグラス,トールフェスクなどの寒地型牧草を播種し,草地化を進めています。

○中央町新城地区

 地区内の酪農家が中心となり地域の人の協力のもと,昨年度から耕作放棄地への和牛放牧を行っています。地区でも耕作放棄地が増加していることから,簡易放牧による景観保全対策は,地域の関心を集めています。今年度は,和牛6頭を2カ所(約3haと2ha)の耕作放棄地で放牧しました。放牧牛は2カ所目の耕作放棄地に9月16日から移動し,2ヵ月たった現在では雑草をほぼ食べ尽くした状態になっています。

(課題及び今後の取り組み)

○「津山ニュー農パーク」構想予定地

 今年度は約70a程度の放牧で終わりましたが,来年度以降は,約11haある予定地すべてを使った放牧を進めたいと考えており,その手順等を検討しています。
 遊休農地を抱える農家と省力管理を考える畜産農家の両者から要望がでてくると思われるので,技術実証地として活用と放牧牛の馴致場としての活用も計画しています。

○柵原町安井地区

 特に放牧面積を拡大する計画はありませんが,簡易放牧を継続することで,増加する耕作放棄地の解消策の一つとして,地域で推進できればよいと考えています。

○中央町新城地区

 放牧地内への簡易牛舎の設置や移動式スタンチョンの検討など放牧牛の繁殖管理のための施設設備,放牧場のシバ草地化などが課題となっています。
 約3haの放牧地を拠点として,簡易放牧地を拡大する(移動する)計画で,放牧地をシバ草地化する予定です。

(参 考)

 別添写真のとおり,簡易放牧による景観保全の効果が現われています。
 この他,山羊などを利用した雑草防除,棚田数枚を一括放牧して景観保全する計画など,徐々に地域での家畜活用がなされ始めています。最近の畜産業界は,口蹄疫からBSE,家畜排せつ物処理問題など暗い話題が多い中ですが,一般の人の目にも触れる機会が多いこの簡易放牧が地域に広がることで,畜産への理解も広がればよいと願っています。


【津山市】放牧前

【津山市】放牧後

【柵原町】放牧前

【柵原町】放牧後


【中央町】放牧前

【中央町】放牧後