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〔技術のページ〕

乳質改善の糸口とは・・・

津山家畜保健衛生所  横内 淳一郎

1.乳質について

 ここ数年で,酪農家のバルク乳の乳質が低下しています。さて,この原因はいったいどこにあるのでしょうか。それは,酪農家自身のちょっとした気のゆるみが原因だと考えられます。今現在,乳牛の能力は10年前と比べ,飛躍的にのびています。しかし,酪農家自身,「忙しい」の一言で,搾乳作業がおろそかになりがちな気がします。そのため,乳質が低下しています。

2.牛の乳房炎について

 牛の乳房炎は,二種類に分類されます。
1つは,臨床型乳房炎。これは,発熱や疼痛などの全身症状を示したり,視覚的に異常な乳房や乳汁を呈する乳房炎です。
もう一つは,乳房や乳汁が正常に見えるため,目で見ただけでは,発見しにくい潜在性乳房炎です。
 乳房炎は,発見が遅れると体細胞数を上昇させ,知らず知らずのうちに乳量を減少させます。中でも潜在性乳房炎は発見が難しいことから「隠れた病気」と言われ,経済的損失の重要なポイントになります。
 乳房炎の感染の予防または感染拡大の防御は,乳房炎コントロールの基本と考えられます。コントロールには,適正な搾乳手順,搾乳作業,高用量のビタミン給与,体細胞の高い牛を最後に搾るなどの対策があります。

3.推奨される搾乳作業

・ユニットを牛のそばに持ってきてから,作業を開始する。
・1頭1枚の清潔なタオルまたはペーパーで前拭きを行い,特に乳頭口をきれいにする。
・1頭の搾乳は,前搾りからディッピングまで,1人で行う。
・エアーを吸い込ませないようにチューブを折って装着する。
・マシンストリッピングはしない。
・乳房をもまない。
・過搾乳を防止する。
・ユニット離脱後,直ちに乳頭の付け根までディッピングをする etc。

 上記のことはどれも欠かすことができない搾乳作業です。
その中でも,過搾乳を防止することでバルク乳の体細胞を低減させることができます。なぜ,過搾乳が悪いかというと,過搾乳によって乳頭口のケラチン層が厚く,固くなる乳頭口角化症が起こります。これは,酪農家の牛舎に行くと,必ずといっていいほど見られる乳頭口で,リング状になったり,悪化すると乳頭管が脱出し,裂けたり又はひび割れて,ささくれ状態になります。
 細菌の侵入に対して,防御的な働きをする乳頭口が人為的に壊されています。過搾乳の指標となる乳頭口の角化症の有無は,搾乳の衛生管理につながってきます。
 もう一度,搾乳作業の基本にもどって,毎日の搾乳をしてみてはいかがでしょうか。
 前拭き時,前搾り時に乳頭口を観察して,我が家の搾乳衛生状況を自己点検しましょう。
 これは,乳質改善以前に「牛への愛情」だと思います。


リング状の乳頭口

裂けひび割れた乳頭口