ホーム > 岡山畜産便り > 岡山畜産便り2004年2月号 > ゆめは株式会社農業よ!

ゆめは株式会社農業よ!

おかやま酪農女性部  安富 三代

 夫が酪農を本格的にはじめて32年私も嫁いで30年を向え,思い起こせばいろいろな事があり,息子が後継者として就農して8年経ち,就農2年目に農業の6次産業化に取り組みアイスクリームの加工製造そして販売,4年目に娘が担当する陶芸工房を立ち上げ体験の受け入れや作品の制作販売をはじめ今6年目に入りました。酪農だけでは味わう事の出来ない経験をしています。我が家の土地を最大限に利用して活かせる事,消費者に酪農と農業を理解してもらうことの二つを実行しています。昨年の出来事を2つ紹介いたします。
 去年10月に総理府主催の男女共同参画社会の推進大会が岡山で行なわれ私の牧場でもJICA(日本国際協力機構)より12名の視察を受け入れました。15年度の男女協同参画推進セミナーの人たちでほとんどが女性でした。中東諸国やアフガニスタン,カンボジア,チリ,コロンビア,ブータン等で,それぞれの国の省に在籍しており,幹部の方ばかりで非常に熱心な方ばかりでした。農村女性の社会進出と地位の向上について話し合いましたが,政策の中に盛り込んではいるものの,農村女性の所得確保や地位の向上はまだまだの国がほとんどですが地味な活動を続け一つ一つ実現させたいとのことでした。中でも数人の方は我が家の貸し農園に興味を示され,少々離れているにもかかわらず農園まで行き牧場面積の何割を占めるか?とかメンテはどうするか等きめ細かい質問があり話しが盛り上がりました。私もこの2年,男女共同参画推進会の委員で勉強させてもらって居りますのでとても興味深く,通訳を通じてでは有りますが苦労話とか楽しみを話しました。短時間のあいだに我が家で行なっている事をあれも此れも,アイスクリームを食べながらした訳ですから話があちこちに飛ぶ中通訳も大変だったと思うのですが,要所では鋭い質問がありさすがに国の将来を考えている人たちだと感動しました。その中でアフガニスタン,カンボジアでは国の中心部で戦争が起き農村部では地雷が埋められ畑を耕す事も出来ない状態と聞き,平和な日本で農地,農村を守ってゆく事が出来る私たちはとても幸せだなと感じ,この平和な農村から農業の素晴らしさを伝えてゆきたいと改めて思っています。
 又,近年私の近くの農産物直売所あるいは農畜産物加工・販売所が盛況で毎年実績を伸ばしています。おそらく全国でも同じ傾向だと思いますが,その中で勝ち組み・負け組みはあるようで,何が原因かなと思って気をつけてみると対応してくれるおばちゃんの気さくな応対,かざりっけの無い親しみの湧く言葉,この当たりで随分イメージが良くなり反面評判を落としていることに気づく。一つの例が無人の直売所,たいした設備も要らず簡単に出来る事から一時期あちらにもこちらにも出現していましたが今ではほとんどお目にかかれません。私のところもアイスクリームの売店で去年の7月より近所の農家さん5〜6人が野菜を持ってくるようになり,私も自分の畑でとれた野菜を一緒に並べていますが,お客様の反応はさまざまで新鮮なものを少量・多品目・品切れの無いように,あわせてその地域で取れたものを揃える事がキーポイントのようです。昨年暮米国でBSE感染牛が発見され食用に回っている検査も十分されていない,この事がいち早く報道され,米国産牛肉の輸入が禁止され大きな問題になっていますが,数年前の日本でのBSE発生のことを考えると当然の処置と思われる。とにもかくにも食の安心安全を。農業生産者はトレーサビリテイーを徹底して行い消費者に知ってもらう事で農業が見直され農業者は随分楽しくなると思います。日本の農業を支える女性パワーを発揮したいものです。