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〔技術のページ〕

貯留牛尿の処理・利用について

岡山県総合畜産センター環境家畜部 環境衛生科

 家畜排泄物の管理,施設整備及び利用の促進を目的とした「家畜排泄物の管理の適正化及び利用促進に関する法律」の完全実施時期(平成16年11月)が近づいており,ふん尿の処理については緊急を要する課題となっています。
 これまで,貯留牛尿については,草地,飼料畑への散布や浄化処理等が行われてきましたが,浄化処理はコストが高くつき,散布についても圃場面積の不足,散布時臭気の問題等により自己完結が難しくなっています。
 そこで,畜産センターでは,新たな処理・利用を目的として「貯留牛尿のデータ集積」を行い,このデータをもとにして「飼料イネ水田への尿施用」や「簡易で低コストな処理技術」の研究を行っています。

1.酪農家の貯留牛尿(データの集積)

 平成13年度に県下101戸の酪農家の貯留牛尿を調査した結果,雨水や洗浄水の混入等によりBODやSSなどにばらつきは見られますが,かなり高い濃度であることがわかりました。そして,貯留牛尿には,窒素やカリなど肥料成分も十分含まれていることが確認できました(表1)。

 したがって,この貯留牛尿を作物に施用する場合は,尿中の窒素濃度を把握しなければなりませんが,この窒素濃度を測定するには時間がかかります。
 しかし,窒素とEC(電気伝導度:水中の塩類濃度の指標となります)には相関があることから,ECメーターで貯留牛尿のECを測定することにより簡単に窒素濃度を推定することができます(図1)。

2.貯留牛尿の利用(飼料イネ水田への尿施用)

 畜産センターでは,貯留牛尿の新たな利用先として,飼料イネ水田へ液肥として活用する技術を,農業改良普及センター,農業試験場とともに取り組んでいます。

 (1) 方  法

 貯留牛尿施用実証水田(乾田直播栽培)において,飼料イネとしてヒノヒカリを用いて貯留牛尿の施用試験を行いました。
 試験は,@基肥として堆肥を使用し追肥として貯留牛尿を使用した区,A基肥として堆肥のみを使用し追肥をしない区,B基肥として堆肥を使用しさらに化学肥料(N14:P14:K14)を使用した区の3区分により行いました。各区の窒素施用量は,10aあたり各々2.9s,5.4s,5.4sとしたため,貯留牛尿の施用量は490L/10aとなりました。
 施用時期は7月(追肥)8月(穂肥)の2回に分け,水口より用水の投入と同時に約1時間かけて行いました。

 (2) 結  果

 収穫調査では,@基肥として堆肥を使用し追肥として貯留牛尿を使用した区が乾物重量で1,721sと最も高い収量となりました(表2)が,飼料成分からみた飼料価値としては,B基肥として堆肥を使用しさらに化学肥料(N14:P14:K14)を使用した区が最も高く,@基肥として堆肥を使用し追肥として貯留牛尿を使用した区とA基肥として堆肥のみを使用し追肥をしない区がほぼ同程度でした。
 また,貯留牛尿の施用によるカリウムと硝酸態窒素の飼料イネへの蓄積は認められませんでした。
 懸念される悪臭の発生は,尿投入時のみ,硫化水素(卵の腐ったにおいと表現され,ふん尿が嫌気状態になったとき発生します。ここでは尿槽内貯留中に蓄積されていた硫化水素が水田投入時に放出されました。)が認められましたが,水田上に悪臭は滞留しませんでした。以上のことから,飼料イネへの牛尿追肥施用は十分に可能な技術です。ただし,多量に投入した場合には悪臭の発生や倒伏の危険性があるため十分な注意が必要です。このため現在,多量投入時の問題点についても試験を実施し,検討を行っています。

3.貯留牛尿の処理(簡易で低コストな処理技術)

 貯留牛尿の河川への放流を念頭に,これまでの畜産センターにおける尿処理技術の研究成果をもとに,図2に示したような乳牛40頭規模の連続式活性汚泥処理施設を用い,処理能力の実証試験を進めています。
 処理施設の面積は37uで曝気槽容積は24m3です。建設費は約610万円で,ランニングコストは1.3万円/月と試算しています。

 (1) 方  法

 貯留牛尿の投入は,1日当たり7.4m3でBOD容積負荷(1m3の曝気槽が1日当たりに処理するBODの量で0.4s/m3・日程度で運転されることが多い)は0.4m3g/m3・日,曝気は24時間連続,活性汚泥濃度(MLSS:活性汚泥中の微生物量の指標,一般的には3,000〜6,000ppmで運転されることが多い)は4,000ppmとしました。また,窒素を効率的に処理するため,循環脱窒法(処理水を調整槽に戻し牛尿と混合させることにより窒素を除去する方法)を用いました。

 (2) 結  果

 試験に用いた貯留牛尿の濃度は,表1の濃度を10倍に希釈した程度でした。COD,BOD,全窒素の除去率はそれぞれ85.4%,98.5%,88.8%と高い効果が得られ(表3),特に窒素については循環脱窒法を用いることにより効果が高まりました。

 以上のように,畜産センターでは,利便性が悪く,有効活用が遅れている貯留牛尿に着目し,新たな利用先として,飼料イネ水田への施用を試みたところ,肥料として十分活用できることがわかりました。また,汚水処理技術については,BOD容積負荷を0.4s/m3・日とし,処理水を再度貯留牛尿と混合させることにより窒素を除去する循環脱窒法を用いれば,BOD,CODとともに窒素も効率的に除去できることがわかりました。なお,この汚水処理技術については畜産センターの低コスト汚水処理施設において実証展示を行っております。