ホーム > 岡山畜産便り > 岡山畜産便り2004年3月号 > 〔普及現場からの報告〕ステンレスを利用した餌槽改造 |
最近,乳用牛の生活環境を改善する取り組みが行われており,積極的に優良事例を取り入れる酪農家がみられます。その中でも今回は,岡山管内で増えつつあるステンレスを使った飼槽の改造について紹介します。
草食動物である牛は,非常に嗅覚が発達していて「臭いもの(腐敗)」=「害を与えるもの」と判断し口にしたがりません。せっかく優れた飼料設計を行っても,牛が採食しなければ意味がありません。飼槽を平滑で清潔に保つことは,エサを無駄にしないためや給与効果を高めるためにも非常に重要です。
〈餌槽の要件〉
@給与・清掃(掃き寄せ)作業がしやすい。
A餌料が食べやすい。
B水が溜まらない。
C汚物が容易に入らない。
D給与飼料のロスが少ない。
〈餌槽の適正サイズ〉
餌槽面の高さ:牛床面から,5〜15p程度高くする(唾液がよくでる高さといわれる)。
後でマットを設置するならマットの厚さも考慮する。
餌槽の幅:80p以上(掃き込み部分含み120p)
牛床との仕切り板:高さ牛床面から10〜20p
※ただし,牛の大きさや牛舎の構造(ません棒や通路等)によって異なってきます。
カスが溜まった飼槽 |
ステンレスを餌槽表面に利用すると,樹脂コーティングなどのように乾燥させる必要がないため,設置自体は一日で行うことができます(掃除などの下準備は別)。ですから,既存の牛舎を改造する場合に適しています。また,耐久性にも優れており,しっかり設置しておけば損傷することはなく,10年以上利用している牛舎もあります。
※ステンレスとコンクリートはくっつきにくいため加工して折曲げ,コンクリートに差し込みます。折り曲げた方に穴をあけておくことで,コンクリートが流れ込みはがれるのを防止します。
1)設置手順(繋ぎ牛舎の場合)
@餌槽の掃除を丁寧に行う。
A木板で仕切り板を設置する。
※牛を繋留したまま改造する場合は,棒などを入れ首や足が出せないようにする。
Bコンクリートを流し込み平らにする。(業者に依頼)
Cコンクリートが乾く前にステンレスの折りしろをはめ込む。(業者に依頼)
D継ぎ目を溶接し,仕切り板へはビスで接着する。(業者に依頼)
写真2 ステンレス餌槽(例) |
2)設置時の留意点
・コンクリートに差し込むため,なかなか修繕できません。ステンレスの厚さは,薄すぎるとはがれるため,特に牛が餌槽を踏むつなぎ牛舎では2o以上にします。
・牛床側の処理方法は様々で,仕切り板に直接ビスでとめたり,角ステンレスパイプを溶接する方法があります。
・牛舎改造は総合的に行う必要があります。
@仕切り板の設置:汚れ部分と清潔にしておきたい部分とを分けるだけでなく,牛が前に出過ぎて滑るのを防ぎます。
A餌槽高さを変更する場合は,ネックレールの高さ,飲みやすいウオーターカップの位置にも注意します。
3)設置費用(例)
※ステンレス代や施工費によって値段の幅があります。
一番顕著に現れる効果は,掃除作業の労力・作業時間軽減です。楽な姿勢で軽い労力ですむようになりました。その他に,残餌が減って乳量や乳成分の向上がみられました。また,仕切り板の設置で飼料のロスが無くなりました。
餌槽は,牛の舌で舐められたりpHの低い飼料を置いたりするため,牛舎内でも耐久性を要求される場所です。今回はステンレスの餌槽を紹介しましたが,これ以外にもゴムマットを利用する等様々な工夫で餌槽改造を行っている農場が増えています。