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〔共済連便り〕

家畜診療日誌

家畜臨床研修所  谷 孝介

 分娩間隔短縮は,乳量を確保し周産期の過肥から生じる代謝異常を防止するために求められている重要な管理技術の一つです。乳牛の分娩間隔短縮を目的に県下の分娩前60日から分娩後120日までの牛群検診データ,773頭分を調査して次のことが分かりました。

1.乳脂肪率は3.7%まで低下するのに60日から90日(脂肪肝に注意)を要しました。
2.乳蛋白質率では3.3%(ルーメンアシドーシスに注意)より高く推移しました。
3.乾乳直後は蛋白質の不足と肝機能が低下していました。
4.乾乳牛の飲水不足がみられました。
5.乾乳中も肝臓に負担を生じていました。
6.分娩前21日からのエサの増し飼いができず,蛋白質とエネルギーが不足していました。
7.乾物摂取量(以下DMI)の低下からデンプン質飼料が多給された状態となっていました。
8.分娩時のストレス(分娩直前の分娩室への移動,難産,早期の助産等)が疲労となり食欲が低下しました。
9.分娩により代謝異常が顕著となり肝機能の低下を更に招いていました。このような状況に血液検査した25%から63%の頭数が検査項目により該当しましたので注意が必要です。

─泌乳量の増加が受胎日数の短縮に問題を生じているのか─

 試験場などでは1万s牛群において空胎日数が100日以内の成績を得た報告があります。初回発情は60日前後と遅れていますが,受胎の遅れにはならない状況でした。乳検成績の目標では,分娩間隔が380日となっていますが,高泌乳が受胎の遅れに直接関係しないことが分かってきました。

─では何が受胎を遅らせているのか─

 発情の見落としが第一に挙げられます。しかし微弱で発情持続時間が短くなっている発情情報をいかに畜主が的確に判断できるかが受胎の有無を左右します。都府県検定成績の平均分娩間隔は平成13年には438日で,分娩から約5ヶ月後の受胎となっています。
 次に,乳牛のエネルギー要求量の増加に伴う,エネルギーの不足で無発情となるケースが増えています。この場合,ホルモン剤での発情回帰は,卵子の品質が低下した状態で卵胞が発育し,受胎や着床が困難となっています。
 検査した期間でも代謝異常から肝機能の低下がみられ,免疫能が低下(子宮内膜炎等)していました。

─早期受胎のためのに─

 乾乳法は通常,急速乾乳により泌乳を促す飼料を停止し,3日から4日間を要して行われています。今回の調査では,この乾乳時に代謝異常が生じ,肝機能の低下を招いていました。対策として

1.乾乳後,直ちに栄養を充足させ代謝を整えます。
2.分娩前21日からの増し飼いを徐々に行い,分娩時で3sから4sの濃厚飼料を給与します。また,DMIの維持に努めます。
3.BCSの調整は分娩の100日前から60日前までに行い,乾乳期間はBCSの維持に努めます。
4.分娩後の乳脂率が5%以上の場合は要注意で,食欲が低下すれば病牛として手当てが必要です。早急な治療を行えば低カルシウム血症と同様,往診回数も少なく発病前の予防的処置で対応ができます。
5.乳量,乳質の情報を活用し,エサ給与の適正化を図り,発情を見逃さないことが必要です。