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〔技術のページ〕

最近の海外家畜伝染病の動向

岡山県家畜病性鑑定所

 これまで海外悪性伝染病には無縁であると思われていた日本においても,近年,口蹄疫やBSE,鳥インフルエンザの発生が認められるようになった。
 これら海外伝染病に対する国内の免疫レベルがフリーの状態で侵入した場合,国内の畜産業界や加工・販売・輸送等の関連産業は壊滅的な被害を生じるだけでなく,人々の生活にも多かれ少なかれ影響が及ぼすこととなる。さらに,それが人畜共通の悪性伝染病である場合,経済活動への影響のみならず人々の公衆衛生上に対する心理的不安を招き,社会混乱を引き起こすこととなる。
 そこで,至近で国内に発生のあった鳥インフルエンザに鑑み,本稿では最近の海外伝染病のなかでも国際獣疫事務局(OIE)が指定する15種類の国際重要伝染病(List A 疾病:表)について紹介する。

・口蹄疫

  偶蹄類の急性熱性伝染病。蹄冠部の糜爛,口腔粘膜の水疱・糜爛・潰瘍を主徴とし,致死率は幼畜で高く,成畜では低い。しかし,ウイルスの伝染力が著しく強く,発病後に生じる発育障害,運動障害および泌乳低下などによる直接的な経済損失は甚大。

・水疱性口炎

  馬,牛,豚等多くの動物の急性ウイルス病。蹄や鼻・口腔粘膜に水疱や糜爛を形成。
  口蹄疫と症状が酷似し,臨床的に区別がつかない。

・豚水胞病

  豚のみに感染する急性熱性伝染病。蹄部及び鼻・口唇部の水疱形成を主徴とする。
  これも口蹄疫と臨床的に区別がつかない。

・牛疫

  偶蹄類,特に牛及び水牛に発熱,沈鬱,暗褐色の重度下痢,口腔粘膜の丘疹・水疱を示す。日本では1925年以降発生はない。

・小反芻獣疫

  山羊及びめん羊の急性伝染病。症状は牛疫に類似し,山羊およびめん羊は感染すると,沈うつ,発熱,流涙,鼻汁,口部潰瘍,下痢,肺炎などを呈し,死亡率は20〜90%と高い。

・牛肺疫

  マイコプラズマが原因の呼吸器系異常(呼吸困難,流涙,流涎,鼻汁)を呈する伝染病。典型的病変として肺の「大理石様紋理」が認められる。

・ランピースキン病

  牛及び水牛の体表に腫瘤を形成するウイルス感染症。牛での感染率は高いが,死亡率は低く,削痩,泌乳量の減少,皮革の品質低下などの経済的損失が大きい。

・リフトバレー熱

  消化器系の異常(発熱,嘔吐,下痢),生殖器系の異常(死流産)などの全身症状を示すウイルス性疾病。めん羊,山羊,牛等の反芻獣の他,齧歯類,犬,猫,猿などにも感染。人畜共通伝染病でもある。幼若な反芻獣は死亡率が高い。

・ブルータング

  吸血昆虫が媒介するブルータングウイルスによって感染。呼吸器系の異常(呼吸困難,呼吸促進,流涙,流涎,鼻汁),運動器系の異常(跛行,関節異常),嚥下障害,先天異常,流早死産などを示す。

・羊痘・山羊痘

  紅斑発疹を特徴とする致死性の高いウイルス性急性伝染病。

・アフリカ馬疫

  古くからアフリカ大陸に発生している,吸血昆虫媒介の馬科動物のウイルス感染症。
  急性の呼吸困難を伴った馬では死亡率が95%以上に達する。

・アフリカ豚コレラ

  豚のみが感染する熱性出血性の急性伝染病。経過が早く,高い致死率を示す甚急性・急性型から発熱を繰り返して慢性肺炎や関節炎を伴い削痩する慢性型まで多彩な病態を示す。ウイルスは数ヶ月間にわたり豚肉や加工肉中に生存する。

・豚コレラ

  豚コレラウイルスの感染によって起こる熱性急性伝染病。後躯麻痺や四肢痙攣などの神経症状を示し,経過が早く,致死率も高い。日本ではワクチン接種によらない,摘発・淘汰方式による防疫体制が進められている。

・鳥インフルエンザ

  トリインフルエンザウイルスによる感染症。日齢に関係なく発生し,流行株により症状は多様であるが,下痢,産卵低下,神経症状及び顔面,肉冠,肉垂及び脚部の浮腫,チアノーゼなどの症状がみられる。日本でも2004年1,2月に発生が認められたのは記憶に新しい。

・ニューカッスル病

  ニューカッスル病ウイルスによる家禽の急性感染症で,高致死率,伝播が早く,日齢に関係なく発生。流行株の病原性は多様であるが,緑色下痢,奇声,脚麻痺,翼麻痺,頸部捻転,産卵低下などが主な症状。