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〔特集〕平成16年度重点施策

平成16年度畜産施策の推進方針

岡山県農林水産部畜産課

 わが国の農業を取り巻く情勢は,高齢化の進展や担い手不足,先行き不透明なWTO交渉などに加え,牛海綿状脳症(BSE)や食品の不当表示,更には高病原性鳥インフルエンザの発生など,食に対する消費者の不安感が高まるなど厳しい環境が続いている。
 このような状況の中で,収益性の高い魅力ある畜産経営の確立を図るためには,安全で高品質な畜産物の生産供給と消費者の信頼回復が大きな課題となっている。
 このため,国が平成12年に農業の持続的発展を目指して制定した「食料・農業・農村基本計画」に基づく「酪農及び肉用牛生産近代化計画」,並びに平成14年に樹立した「県新世紀おかやま夢づくりプラン」,更には平成15年度に見直しが行われた「新・21おかやま農林水産プラン」などに沿って,安全で安心な畜産物の安定供給を基本に,経営の合理化による生産性の向上や低コスト生産を推進する。
 特に,本年11月から「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」の規制が強化されることから,家畜排せつ物処理施設・管理施設の整備を急ぐ一方で,畜産バイオマスである家畜ふん尿を新たなエネルギー資源として利活用するなど,自然循環型農業の推進に努めることにしている。
 また,高病原性鳥インフルエンザ等海外悪性伝染病の侵入防止やまん延防止など,家畜衛生対策に重点をおくほか,耕畜連携による自給飼料の増産や,和牛増頭対策に積極的に取り組むことにしている。
 さらに,畜産物に対する信頼回復については,牛肉等をモデルとした畜産物のトレーサビリティシステムを中心として,県民に対して的確な情報発信を行うとともに,地産地消運動に呼応した消費拡大対策を実施するなど,活力と持続性に富んだ力強い畜産の実現を目指すことにしている。

1.酪農対策

○耕畜連携による新たな水田農業対策と協調するほか,転作田や耕作放棄地を利用した自給飼料の増産
○雌雄判別受精卵移植技術等先端技術の活用や牛群検定の普及促進による乳用牛の改良増殖の推進
○公共育成牧場の再編と運営体制の強化による県産優良後継牛の安定供給
○平成17年に栃木県で開催される第12回全日本ホルスタイン共進会,第4回全日本ジャージー共進会に向けた出品対策協議会による候補牛の選抜や各種講習会の実施,更には優良牛の導入助成による出品対策の強化
○地域特性のある新たな牛乳・乳製品の開発など,農業の六次産業化の推進と付加価値の高い生産構造への誘導
○中国四国酪農大学校を中心とした経営感覚に富む新規就農者の育成確保をすすめる一方,酪農ヘルパー・コントラクター組織等の育成による支援組織の充実強化

2.肉用牛対策

○第8回全日本和牛能力共進会の成果を基に,育種価や後代検定の実施による産肉性の高い種雄牛作りや高度な肥育技術の普及定着
○和牛の放牧推進や地域内一貫生産体制の拡大,更には優良受精卵の乳用牛への移植による和牛の増頭対策等による低コストで高品質な牛肉生産の推進
○県産牛肉で実施中の牛肉生産履歴であるトレーサビリティシステムの充実による消費者への安全安心対策の強化
○「おかやま和牛肉」ブランドの定着を図るため,首都圏等での販売宣伝活動の推進
○県営食肉市場関係団体のISO9001認証取得に向けた取り組みの実施

3.養豚対策

○価格安定対策の継続実施と経営感覚に優れた企業養豚の育成
○優良種豚の導入や人工授精の普及定着による低コスト経営の確立
○消費者ニーズに的確に対応するため,黒豚やSPF豚など高品質豚肉の生産振興と環境と調和のとれた肉豚生産団地の育成
○「おかやま黒豚」の産地拡大と銘柄化を推進するため,総合畜産センターからの優良種豚の供給促進のほか,協議会によるPR促進や指定店による消費拡大運動の実施
○県産豚肉に係るトレーサビリティの試験的導入

4.養鶏・養ほう対策

○鶏卵については,「生産者の主体的な判断による新たな計画生産」へ移行する一方,価格安定対策を通じた卵価安定対策の実施
○鶏肉については,安全で高品質な鶏肉の供給を基本に効率的衛生的な飼養管理の徹底を図るほか,腹腔内の脂肪蓄積が少ない系統造成の実施
○地鶏の特定JASを取得した「おかやま地どり」の表示の普及と消費の拡大
○養蜂については,耕種農家等と連携したレンゲやユリノキなどのみつ源増殖と,円滑な転飼調整対策の実施

5.飼料対策

○「岡山県粗飼料増産推進計画」に基づく,草地の造成整備,転作田の有効活用による飼料作物作付け面積の拡大
○優良草種・品種の導入による単収の向上
○耕種農家との連携のもと,水田等既耕地の有効活用によるIWCS(稲発酵粗飼料)の普及促進やコントラクタ組織の育成強化

6.家畜衛生対策

○口蹄疫・BSE・高病原性鳥インフルエンザなど悪性伝染病の発生・まん延防止のため,家畜保健衛生所,家畜病性鑑定所のほか,県の関係機関が一体となった危機管理体制の整備や監視体制の充実強化
○慢性疾病等の発生を未然に防止するため,サーベイランスや予防接種を推進
○特に,県内で多発しているヨーネ病対策として,乳用牛の全頭検査(隔年)を継続実施し,陽性牛の早期発見と早期淘汰よる清浄化を促進
○24ヶ月齢以上の死亡牛のBSE全頭検査の継続実施
○サルモネラ菌や大腸菌(O−157)等の汚染防止のための生産現場での衛生管理の徹底
○農業共済連と連携した死亡廃用事故の低減対策の実施

7.環境対策

○「家畜排せつ物法」の規制強化に向けた家畜ふん尿処理施設等の計画的な整備
○高品質な堆肥の製造・供給と,耕種農家との連携を強化した利用体制の確立
○生ゴミ等食品残さを活用した堆肥製造技術の確立
○家畜ふん尿を化石燃料に替わる新たなエネルギー源として利活用するバイオガス発電システムの実証展示と,発酵残さの効果的処理技術等の検討

8.技術開発と指導対策

○総合畜産センターを中心として,バイオテクノロジー等の先端技術を活用した雌雄判別卵の凍結技術や胚・体細胞クローン技術の確立,及びDNA利用による改良促進
○胚凍結精液の実用化,尿汚水の簡易無臭化技術の確立など,畜産農家の生産性向上や低コスト生産に直結した試験研究の実施
○消費者ニーズに対応した畜産物等加工品生産のための技術開発と普及