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〔特集〕平成16年度重点施策

平成16年度から始まる試験研究課題の紹介

岡山県総合畜産センター 経営開発部

 総合畜産センターでは,平成16年度から新規に開始する試験研究課題として,「バイオマス地域循環利用技術の開発」「受精卵移植における胚細胞利用技術の検討」「新しいヘテロ型発酵乳酸菌を利用した地域食品製造副産物TMRの実用化技術の検討」「共役リノール酸を強化した畜産物の生産技術の開発」「食味形質の遺伝的解析による美味しい牛肉生産に関する研究」を予定しています。
 以下に各課題の概要を紹介します。

【研究内容】

1:バイオマス地域循環利用技術の開発
(H16〜18)

 畜産経営から排出される家畜ふん尿は,バイオマス資源と呼ばれ石油に代わる新たなエネルギー源として注目されています。バイオガス(メタンガス)発酵方式は,条件の異なった種々の方式が考案されており,また,発酵後に発生する消化液(発酵残さ)については,汚濁成分や窒素,リン酸等を高濃度に含んでいるため,一部液肥には利用されていますが,処理方法・利用技術が確立されていません。
 そこで,バイオガス発電システムの実証展示を図るとともに,あわせて,バイオガス発酵過程で生成される消化液について間欠曝気等を用いた効率的な浄化処理及び利用技術を検討します。
 本年度は,当センター養豚ゾーン内にバイオガス発電システムを設置し,豚ふんを利用したメタン発酵処理について,バイオガスの組成,浄化処理水についての水質等の基礎データを得ることとしています。
 更に,全国各地で実施されている様々なメタンガス発酵システムについて調査を行い,普及に向けての基礎データを得ることしています。

2:受精卵移植における胚細胞利用技術の検討           (H16〜20)

 凍結した性判別受精卵は新鮮卵と比較して,凍結時のダメージにより一般的に受胎率が低くなっています(新鮮卵受胎率:65%,凍結卵受胎率46%)。近年,受精後15〜17日目の胚から妊娠維持物質(インターフェロンタウ)の放出が確認されていますが,凍結卵では凍結時のダメージによりこの妊娠維持物質の放出が弱く,受胎率の低下を招いていると考えられています。
 そこで,受精卵移植時に妊娠維持物質を放出する栄養膜小胞を同時に移植することにより受胎率の向上を図り,受精卵移植技術のより一層の普及定着を図ります。
 本年度は,栄養膜小胞作出にあたって,胚回収の時期及び方法,栄養膜小胞の培養方法や凍結保存技術について検討することとしています。

3:新しいヘテロ型発酵乳酸菌を利用した地域食品製造副産物TMRの実用化技術の検討          (H16〜18)

 食品製造副産物の飼料化にあたっては,これまでホモ型乳酸菌によるサイレージ化に取り組んできましたが,サイレージ化により生成された乳酸を開封時に利用する好気性菌等による二次発酵(変敗)が課題となっています。
 そこで,乳酸菌と好気性菌の増殖を抑制する物質である酢酸,プロピレングリコールを生成するヘテロ型の乳酸菌を利用することにより,サイレージ開封後の変敗防止効果を検討します。
 また,プロピオングリコールのケトーシス予防やルーメン内絨毛活性化などの効果についても検討します。
 本年度は,飲料製造工場や菓子製造工場などから排出される廃糖液を乳酸菌培地として利用する方法を検討することとしています。
 また,ヘテロ型乳酸菌発酵により生成する酢酸やプロピオングリコールの量を測定するとともに嗜好性の試験を実施することとしています。

4:共役リノール酸を強化した畜産物の生産技術の開発       (H16〜18)

 消費者の健康志向,特に機能性食品の需要は年々高くなってきています。リノール酸の一種である共役リノール酸(CLA)は,ガンや動脈硬化等各種疾病の予防効果のある機能性脂質と言われており,近年注目されています。
 CLAは,反芻家畜の乳脂肪や脂肪組織に多く存在しており,特にジャージー種は他の品種に比べCLAを多く生産する特性を持っています。
 そこで,ジャージー種を対象に,高いCLA生産能力を持った個体の改良を進めるとともにCLA含量を高める飼養管理技術を開発します。
 本年度は,ジャージー種を対象に生産物中(生乳及び牛肉)のCLA含量について調査を行い飼養方法や季節,個体などの影響を把握するとともに各種遺伝子型(成長ホルモン遺伝子型,mtDNA遺伝子型,体脂肪を不飽和化する酵素に関与する遺伝子型)との関連について検討することとしています。

5:食味形質の遺伝的解析による美味しい牛肉生産に関する研究   (H16〜18)

 牛肉の不飽和脂肪酸の含有率は,牛肉の美味しさに大きく影響を与えていることが知られています。また,不飽和脂肪酸は,体脂肪を不飽和化する酵素に関与する遺伝子型(SCD型)と成長ホルモン遺伝子型(GH型)の関連性が指摘されています。
 そこで,SCD型,GH型及びその産肉性に及ぼす影響について調査し,より美味しい高品質な牛肉の生産と改良を図ります。
 本年度は,総合畜産センター内の後代検定牛,枝肉共励会,枝肉共進会の出品牛約400頭について,SCD型及びGH型を判定し,枝肉成績や脂肪酸組成との関連性について検討することとしています。

 以上,平成16年度に新規で実施する試験課題を紹介しましたが,このほかにも「泌乳初期におけるストレスを軽減するための飼養管理法の検討」「岡山和牛低コスト生産のための飼養管理法の検討」「美味しいおかやま黒豚・おかやま地どりの飼養技術の確立」「家畜尿汚水の液肥化技術やふん尿発酵処理過程におけるメタン・亜酸化窒素の発生抑制技術の開発」「イタリアンライグラスの省力的生産技術や簡易放牧技術の検討」などの課題を実施しています。
 これらの課題の成果に期待してください。

 次号では,最近の研究成果について述べてみたいと思います。