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〔振興局だより〕

人生の楽しみが「牛飼い」
−和気町 石野謙一さん 和枝さん−

東備地方振興局

 東備管内で酪農家から和牛繁殖に経営を転換し,第2の人生を楽しんでいる石野謙一さんを紹介します。

1 和気町の概要

 和気町は県の東部に位置し,自然豊かな町です。春には藤公園で全国各地の天然記念物に指定された藤の花見,夏には和気富士で行われる和文字焼きの納涼まつり,秋にはもみじがりと四季を通して多彩な行事に恵まれています。また,県内外から一年を通して和気鵜飼谷温泉へ心と体の休息を求めてやってきます。

2 経営者の概要

 石野さんは現在,夫婦2人で和牛繁殖経営に取り組まれています。

 1)家族構成
   石野謙一さん(58歳)
     和枝さん(53歳)
     子供2人(29歳,28歳)

 2)経営概要(平成16年6月現在)
   田    55a
   (うち借地20a,採草地として利用)
   繁殖雌牛 10頭
   (平成2〜10年生まれ)
   子牛   9頭
   飼料   購入飼料

 3)経営の年表
   昭和35年〜
    育成 お母さんがJAの預託を開始
   昭和39年4月〜
    酪農 謙一さんが三徳塾を卒業後すぐ就農(搾乳1頭)
   昭和49年
    和枝さんと結婚
   昭和59年〜
    最高搾乳42頭,330t/年
   平成15年4月
    酪農業廃業
   平成15年10月
    和牛繁殖開始(導入:久世,長崎県,等)

3 転換のきっかけ

 年齢を重ねるにつれて朝・夕の酪農作業が重荷になってきたこと,体の健康,今後の人生のゆとり生活等を考慮して,酪農生活39年にピリオッドを打ち,若い時に習得した剪定技術を活かした仕事に就くことを計画されていましたが,ある人の助言により,和牛経営を始めることとなりました。
 経営転換に当たっては,近隣で先に和牛転換された農家や関係機関からの情報等を収集するとともに,乳牛の飼養頭数を少しずつ減らしながら,ET技術を活用し乳牛に和牛受精卵を移植して基牛確保の準備を約1年かけて行ってこられています。
 種付け等の技術を持っていたことから,和牛経営に少し不安はあったものの気楽な気持ちで開始されたそうです。しかし実際に飼ってみると乳牛と和牛は全く飼養形態が違うことから,初めのうちはもちろんですが,8カ月になる現在(平成16年6月)でも戸惑うことが多く日々の飼い方に悪戦苦闘し,毎日が勉強とのことでした。苦労の1例を紹介すると,子牛が産まれてから数日間のうちに,配合飼料を食べさせるコツを掴むことが難しく,失敗の繰り返しだったそうです。
 石野さんは勉強熱心な方で,時間があれば管内及び県内の優秀な農家に出向いて勉強され,自分の経営に取り入れられています。
 現在,経営で気をつけていることは,子牛の飼養管理,発情を的確に把握し種付時期を逃さないこと,牛が自由に動け日光浴等ができる飼育環境を設けることだそうです。
 今回繁殖経営に転換されたことで,心と時間に余裕ができ,第2の人生を謳歌しながら,あと20年は経営を続けたいと頑張っていらっしゃいます。

4 今後の目標

 現在繁殖基牛が高騰していることから,経産牛を購入して人工授精,ET技術等により基牛を造っており,将来は優秀な繁殖雌牛15頭を繋留して1年1産の和牛繁殖経営に取り組みたいとのことでした。
 また,「人生を楽しみながらの牛飼いをしていきたい」とも言われていました。
 まだ経営を転換されたばかりですが,石野さんの活躍を関係者は期待しています。