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〔技術のページ〕

耕種農家に評判のよい良質堆肥を

岡山県総合畜産センタ−環境家畜部 環境衛生科

 本年11月より家畜排せつ物法が完全施行され,家畜ふん尿は処理施設等で,適正な処理と管理をしていかなければなりません。
 しかしながら,処理施設を設置し,堆肥を作ったのに耕種農家等にあまり利用してもらえないなどの話を聞くことがあります。また,処理施設を作ったばかりの方やこれから設置される方で,うまく発酵させて,良質な堆肥を作るにはどうしたらいいのかと悩んでいる方もいると思います。
 これらを解決するには,堆肥発酵のしくみを知り,堆肥を使う立場に立って,何が求められているのか,どこを改善すればよいのかを考え,そのニーズに応えることができれば,次第に利用してくれるようになります。
 そこで,今回は,既に堆肥を作られている方は,今一度初心に返っていただくために,また,堆肥を作り始めたばかりの方やこれから始められる方のためにも,堆肥発酵の原理と耕種農家・園芸農家等に評判のよい堆肥の条件についてご紹介したいと思います。

T 堆肥発酵の原理

 堆肥発酵とは,家畜ふんや副資材(オガクズ,もみがら等)に含まれる有機物が微生物により分解される作用そのものを意味します。この時活躍する微生物が,好気性(酸素のある状態を好む)微生物を主体とする微生物群です。そして,発酵過程には,発酵温度が60〜80℃に上昇し,有機物が急激に分解する1次発酵と,温度が下がりゆっくりと分解する2次発酵に分かれます。このように,堆肥発酵は,微生物の働きで行われるため,@有機物(微生物の餌)・A水・B酸素・C温度等の条件を整え,微生物が活動しやすい環境にする必要があります。通常家畜ふんは,@とAは,十分に満たしているため,Bが整うか否かで堆肥発酵がうまく行くか(温度が上昇するのか)が決まります。Bが整えば,Cは自然に70℃近くまで上昇します。しかしながら,生ふんは比重が重いため,堆積しただけでは圧密されて,ふんの内部に酸素が全く含まれない嫌気性の状態になってしまいます。このため好気性微生物の活動は抑制され,逆に嫌気性の腐敗が進行してしまいます。ふん尿に副資材を混ぜると,良好な堆肥発酵が起きることは誰でも知っていますが,それは水分が調整されたからではなく,比重が調整されて,通気性のある状態になったからなのです。
 しかし,比重を調整しても,堆積しているだけでは,空気が通るのは,せいぜい表面から20〜30cm程度で,内部は,嫌気状態で分解はほとんど起きていません。(写真1)

 そこで,内部の嫌気部分を外側に出し酸素に触れさせる切り返しという作業が重要となってきます。切り返しを,内部に再び空気を入れてやる作業と思っていた方も多いと思いますが,実は堆肥表面を作り直しているだけなのです。発酵が開始すれば,後は1次発酵で,畜ふんやわら類等の繊維分が分解され,2次発酵ではもみがらやオガクズ等の難分解性のものが分解されていきます。
 要するに,もっとも重要なことは,酸素がなければ何もできない好気性微生物のために,酸素が供給できる体制を整えてあげるということです。
 是非,皆様も微生物になった気持ちで上手な堆肥発酵処理に挑戦してみて下さい。

U 評判のよい堆肥とは?

1 悪臭のしないもの!

 悪臭成分の主なものは,アンモニア,低級脂肪酸,硫黄化合物系の臭気ですが,堆肥化過程において好気性発酵を持続することで,これらの悪臭を最小限に止めることができます。そのためには,含水率を60〜65%に調整するか容積重を0.5s/L(10Lバケツに5s程度)にできるだけ近づけ,通気性を改善することが重要です。

2 汚物感がなく,取り扱いやすいもの!

 素手で取り扱うことができる堆肥を作りましょう。出来上がり堆肥の含水率はできるだけ低くすることが望ましく,水分が高いと取り扱いにくいだけでなく,重くて運搬や散布等の作業が困難になります。なお,袋詰めをする場合は,含水率を30%前後として下さい。

3 堆肥中の病原菌・寄生虫卵・雑草種子等が 死滅していること!

 堆肥化過程の発酵温度をできるだけ高温になるように管理することが重要で,一般的に病原菌や雑草の種子を死滅させるには,60℃以上の高温に1週間以上さらされている必要があり,少なくとも堆積物の温度管理は常時行うようにして下さい。(表1・2)

4 十分に腐熟させ,作物の生育阻害物質を含 まないこと!

 生育阻害物質には,フェノールカルボン酸や低級脂肪酸等があります。これらは,新鮮な畜ふんにはそれほど含まれていませんが,稲わら・オガクズ等の副資材や嫌気的条件下で堆肥化を行うと多量に生産されるようになります。従って,好気的な発酵を促進し,副資材に含まれる阻害物質を分解消失させるため十分に腐熟させましょう。

5 堆肥中の塩類濃度が高すぎないこと!

 戻し堆肥を副資材として使用する時は,カリウム等の塩類濃度が高くなりやすいので,注意が必要です。戻し堆肥だけでなく,オガクズやもみ殻等の副資材と併用すれば,塩類濃度は希釈されて問題にならない範囲となります。

 現在,総合畜産センタ−の堆肥化施設(写真2)では,バイオマス(生物由来の資源)の利活用のため,家畜ふんと地域からの生ゴミを一体的に処理することで,有機資源による地域リサイクルシステムを構築し,畜産業と地域との共存を図ることを目的に,畜ふん・生ゴミ混合堆肥の生産実証試験を行っています。(写真3)生ゴミは,畜ふんに比べて,栄養豊富で分解し易い有機物も豊富に含まれているため,年間を通じて良好な発酵をしていますので,関心のある方は,是非見学にお越し下さい。

 最後に,生ゴミや家畜ふん尿の処理を単なる廃棄物の処分とは考えずに,適切な堆肥化処理により貴重な有機質資材に生まれ変わるんだとの意識改革が重要です。その結果,誰にも負けない堆肥ができた時には,きっと堆肥作りが楽しくなると思います。