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〔技術のページ〕

「カウコンフォート」について

岡山県総合畜産センター 大家畜部 中村 行雄

1.「カウコンフォート」とは

 最近酪農で「カウコンフォート」という言葉をよく耳にするようになりました。
 直訳すると「カウ」は「牛」,「コンフォート」は「快適,安楽(不安,苦痛,不安のない)」ですから,「牛の快適性」という意味になるかと思います。これを進めて,牛が快適であるとはどういうことか,どのようにしたらより快適にしてやれるかを考えることにより産乳量の増加につなげることが「カウコンフォート」になります。
 この言葉は,動物福祉の思想や動物の行動学の進んだヨーロッパにはじまり,日本に伝わり,国内では特に北海道で研究と実践が進んでいます。

2.なぜ今,「カウコンフォート」が注目されているのか

 乳牛の能力つまり産乳量を増加させるためには,遺伝的な改良と環境の改善が必要です。
 乳牛の育種改良による遺伝的能力の向上はめざましく,牛群検定成績で305日乳量の推移(ホルスタイン)をみると,昭和50年で北海道で5,900s,都府県で5,718sだったのが,平成14年には各々8,990s,9,057sと1.5倍以上に増加しています。

 この10,000s近い泌乳能力を十分に発揮させるためには,飼養管理はもちろんのこと,牛にやさしい環境を作ることが不可欠となっているのです。

3.「カウコンフォート」のポイント

 それでは,どのような牛にやさしい環境の改善ができるのか考えていきましょう。
 ここでは@繋留と牛床,A換気と暑熱対策,B飼槽,C給水に分けて考えてみました。

1. 繋留と牛床

 繋留の方法は「スタンチョン」からより自由度の高い「ニューヨークタイ」へ変わりつつあります。

 牛はいつも1.30〜1.40m×1.60〜1.90m程度の牛床から離れられず,行動が束縛されているなかで,1日に10回以上,寝たり起きたり,エサを食べたり,水を飲んだり,排泄したり,すべての生活を行っていますので,いつも快適な環境にしてやることが重要です。
 楽に立ったり座ったりできるか,体をどこかにぶつけないか確認する必要があります。
 牛床が短いとストールからはみ出しますし,長すぎるとある程度はカウトレーナーで訓練できますが,バーンクリーナーに排泄物が落ちなくなります。
 コンクリー等の堅い床による関節や皮膚への損傷を和らげるためには,ゴムチップ等のマットを敷くのが最良です。マットがあると横臥時間が明らかに長くなります。

 「ゴムマット」は多種多様で,ゴムの材質,厚み,クッション性,長さ,耐久性,表面加工,価格,施行のしやすさ等,1長1短があります。
 滑る牛床は,前膝や飛節の擦りむけや腫れ,蹄病,乳頭の損傷の原因になります。
 そのためチップ,オガクズ等の敷料を敷いてふん尿からの汚染の防止,水分の吸収,保温,クッション性を高めます。

2. 換気と暑熱対策

 暑い時期は,外界の暑さに加え,乳の生産のために牛自体からも熱が発生するので,それらの熱を牛舎外に出すことが重要です。
 換気は大型の「送風ファン」による強制換気が一般的になっています。インバーターによりスピードをコントロールしたり,ダクトを付けてねらったスポットへ風を導いたり,トンネル換気という牛舎自体をトンネルに見立て,一方向に換気する方法もあります。
 夏期には,開閉可能な出入り口,カーテン,窓は開けたり外してください。また,蜘蛛の巣やゴミが送風機に付いていないかの点検も必要です。送風ファンの掃除は換気の効率を良くしますが,意外にできていないものです。
 送風の向き,強さは,畜舎構造,周辺環境との関係,日当たりを考慮してください。
 農家によっては,夏期に,牛の毛刈をしたり,寒冷紗,ヨシズ,朝顔等の植物で陰を作ったり,屋根に石灰乳を塗り日光を反射させたり,井戸水をラジエターに通し送風することでクーラーを作っている例や,牛舎内に細霧装置,屋根にスプリンクラーを設置している所もあります。

3. 飼槽

 牛が欲しいときに,楽な姿勢で,特に粗飼料は欲しいだけ食べられるように管理が必要です。
 コンクリーやタイルでは表面が老朽化して凹凸ができ残滓が腐敗していないか点検してください。
 フラットな飼槽にするとこぼれた水が溜まらず衛生的ですし,エサ押しも楽にできます。「樹脂コンクリート(レジンコンクリート)」や「FRP塗装」の飼槽は耐水性,耐磨耗性,耐酸性,耐アルカリ性などに優れています。
 また,自動給餌機による,少量多回給与は採食量の増加に効果があります。

4. 給水

 きれいな水をいつでも好きなだけ飲めるようにするだけで乳量は増加すると言われています。
 「ウオーターカップ」のベロを押して牛舎の隅まで場所により吐水量が違わないか確認して端の方が少ないなら配管の繋ぎ方やパイ
プの口径を大きくする等の工夫が必要です。
 また,ウオーターカップを2頭に1台から1頭毎にしたり,「大きなウオーターカップ」にして一気に飲める量を増やすことも有効です。
 県内ではまだ珍しいですが,ウオーターカップから「連続水槽」へ替え乳量がアップした事例もあり,今後,連続水槽は増加しそうです。

4.自分の牛舎でチェックして「カウコンフォート」を実践してみよう

 自分の牛舎で問題点(牛にとってどこが不快か)を確認してみましょう。
 問題点毎の,重要度,難易度,経費,時間,労力を分析して,どの問題から解決してゆくか,優先順位をつけ,できるところから改善していきましょう。