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「家畜排せつ物法」の完全施行迫る!

岡山県農林水産部畜産課

1.「家畜排せつ物法」の完全施行間近!

 「家畜排せつ物法(家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律)」が平成11年11月に制定されてから,5年間の猶予期間を経過し,管理基準規定の完全施行となる本年11月1日まで,残すところ1ヶ月余となりました。
 この法律が出来た背景には,近年の畜産経営の規模拡大に伴い,家畜排せつ物の排出量が増大し,水質汚濁や悪臭等による苦情の発生や,地下水の汚染問題などが顕在化してきたことがあげられます。
 また,最近の環境問題に関する世論の高まりの中,「家電リサイクル法※1」や「食品リサイクル法※2」等が相次いで制定され,廃棄物は排出者自らが適正に処分し,出来る限りリサイクル(再資源化)することにより,資源の有効利用を図ろうという流れが出来てきました。「家畜排せつ物法」もまた,排出者である畜産農家自らが,家畜排せつ物を適正に処理(管理)し,有機質資源として農地に還元する等により有効利用しようという目的のために出来た法律でもあるのです。

2.家畜排せつ物の管理基準とは?

 家畜排せつ物は,堆肥や液肥として農地に施用することにより有用な肥料になる一方,窒素やリン酸等が多く含まれるため,雨水等により河川に流れ出て水質が悪化したり,地下浸透して地下水に硝酸性窒素が蓄積するなど,環境へ悪影響を及ぼす場合があります。
 このため,「家畜排せつ物法」では,家畜排せつ物は次の管理基準に従って管理することが求められています。
 (1) 管理基準
  1. 家畜排せつ物は,管理施設において適正に管理すること。
  2. 管理施設及び附帯施設は,定期的に点検を行い,必要な修繕等を行って適正に維持管理すること。
  3. 家畜排せつ物の発生量,利用量等について記録すること。
 (2) 管理施設の構造基準
  1. ふん等の固形物の管理施設は,床をコンクリート等の不浸透性材料で築造し,適当な覆い及び側壁を設けること。
  2. 尿等の液状物の管理施設は,コンクリート等の不浸透性材料で築造した貯留槽であること。
 また,堆肥や液肥の状態であっても,窒素やリン等の環境負荷物質の濃度は処理の過程で大幅に低減されているとは言えないため(例えば,窒素は堆肥化後も生糞に含まれる量の約8割程度が残存している),牛・豚・鶏・馬のふん尿のほか,堆肥や液肥,ふん尿を含む汚水等についても,適切な管理が必要となります。

3.県内の管理施設の整備状況

 法律制定後,この5年の間に280以上の施設整備をすすめ,本年4月現在,県内約900の法対象農場のうち,約8割の農場に管理施設が確保されました。
 残り約150の農場が,法の基準を満たす管理施設の整備が必要となっており,現在,各種の補助事業等を活用しながら,10月末の完成を目指して急ピッチで施設整備が行われているところです。

4.堆肥の利用推進を図りましょう

 「家畜排せつ物法」をきっかけとして,多くの堆肥化施設が建設され,今後ますます堆肥の生産量は増大すると考えられます。
 コストをかけて施設整備し,労力をかけて生産した堆肥も,利用されなければ,結局堆肥の野積みが発生する恐れがあり,畜産環境問題は解決されません。
 飼料作物等への積極的な自家利用はもちろん,水稲・果樹・そ菜等の耕種作物への利用の促進が必要となります。
 「耕畜連携」という言葉が近年よく使われますが,堆肥流通の面でも,「耕種」と「畜産」の密接な連携のもと,量と質相方の需給バランスを確立することが重要だと思われます。
 このため,県では,「堆肥利用ネットワーク活用事業」に取り組み,地域での堆肥利用のネットワークづくりや堆肥の品質向上,堆肥利用組合等が行う堆肥散布活動への助成,更にはストックポイント・堆肥散布機械等の導入に対する助成を行って堆肥の流通促進を図っているところです。

5.終わりに

 個別で対応を予定されている方々におかれましても,シートを活用した簡易処理等を含めた施設整備を早急に実施いただき,万全の体制で11月1日を迎えるべく対応くださいますようお願いします。
 畜産経営が,将来にわたって安定的に発展していくためには,地域社会との共存・共栄が欠かせません。畜産農家の皆さんにおかれましては,改めて法の主旨・目的を御理解いただき,今後とも家畜排せつ物の適正な管理と利用の促進に努めていただきたいと考えます。

※1「特定家庭用器機再商品化法」
※2「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」