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〔家畜保健衛生所のページ〕

高梁家保管内における受精卵移植の取り組み

岡山県高梁家畜保健衛生所

1.はじめに

 当管内は高梁・阿新地域からなり,岡山県の中部から西北部にいたる高原の多くの部分がその管内に含まれています。地形としては典型的な中山間地であり,高梁地域では吉備高原の冷涼な気候を利用した乳用牛飼育が盛んであり,阿新地域は古くから和牛地帯として全国的に有名です。
 当管内の受精卵移植事業は,公共育成牧場の育成牛を対象とした県エリート乳牛卵移植と地域の受精卵協議会による繁殖和牛からの採卵・移植が主体となっています。
 特に繁殖和牛は,最新の育種価表で脂肪交雑県下100位以内に15頭がリストアップされるなど,地域内には優れた雌牛が多数飼養されています。畜産農家の改良意欲も非常に盛んで,現地卵や県有償卵を活発に利用しています。
 一方,高梁市の大池山育成牧場では,地域内外から130頭を超える育成牛が預託されており乳牛・和牛受精卵の移植基地となっています。

2.現在の取り組み状況と移植・採卵成績

 (1) 受精卵移植の状況

 昨年度の総移植頭数は94頭,受胎頭数は56頭であり,59.5%の受胎率を誇っています。
 当家保が現在移植を実施している受精卵の種類を@〜Bに,平成15年度の移植頭数,受胎率を表1に示しました。
  1. 県乳牛雌牛卵(県エリート乳牛卵)
 総合畜産センターで飼養されている超高能力乳用牛(乳量18,000s以上又は同等の能力を持つ牛)から採卵された受精卵で雌雄判別を行った雌卵のみを供給しています(分娩産子の初産時の産乳能力約11,000s)。雌卵価格は雌雄判別手数料,移植手数料込みで65,700円です。
  2. 県有償和牛卵
 総合畜産センターで飼養されている育種価上位牛(脂肪交雑Aクラス,0.800以上)から採卵された受精卵。受精卵価格は,8,400円,移植手数料は無料です。
  3. 肉用牛広域後代検定推進事業卵
 地域の優良雌牛を県が借り上げ,受精卵を採卵・移植し,その産子は地域内に保留します。受精卵,移植手数料共に無料です。
 その他,県の研究用受精卵も取り扱っています。

 (2) 採卵状況
 昨年度は現地の優れた繁殖和牛より10回の採卵を実施し,合計225卵を回収,そのうち116卵の移植可能卵が得られました。1頭当たり11.6卵という採卵成績が得られています。これは採卵技術の進歩とともに,採卵を行った和牛農家の飼養管理技術が優れており子宮,卵巣の状態が良かった結果と思われます。

3.受精卵の移植・採卵技術の仕組み

 (1) 受精卵の移植

 ここで受精卵移植の基本をおさらいしてみます。
 牛は,妊娠してない場合,約21日周期で発情を繰り返します。そして発情後,正常な排卵は2日以内に起こります。排卵日を1日目として7日目に受精卵を移植しますので,普通は発情から7〜8日目で移植となります。よく出血したから移植して欲しいという依頼もありますが,この場合は発情・排卵の時期が分かりませんので,受胎させるのは難しいと考えてください。受胎率を上げるためには,発情の観察と記録が最も大切です。
 移植時,卵巣に正常黄体が形成されていれば,子宮頸管はきつく閉まり,陰部も十分緊縮した状態となっているはずです。
 また,新鮮卵の方が凍結卵よりも受胎率は良くなるので,採卵の日にあわせて移植できるように,受卵牛はホルモン剤による発情の同期化を行います。

 (2) 採   卵

 採卵とは,供卵牛(レシピエント)の子宮から7〜8日目の受精卵を回収する技術で,一般的に黄体期の9〜14日目に過排卵処理を行います。
 現在,当家保で実施している採卵移植計画表の例を表2に示しました。

 このように採卵を行うためには,ほぼ1ヶ月近い日数が必要です。そのため,採卵成績を上げるためには,正常な性周期を繰り返している適正なボディコンディションスコアの牛を選定するようにしています。

図1 採卵・移植用ホルモン剤

図2 受精卵移植

図3 採  卵

4.今後の課題

 平成17年1月から第9回全国和牛能力共進会に向けて和牛受精卵移植が県下200頭を目標に行われます。
 当家保でもかなりの頭数を実施する予定です。受卵牛は未経産牛・経産牛にかかわらず行いますので,農協等関係機関をはじめ,農家の皆さんには,ご協力をよろしくお願いします。