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〔畜産農家の声〕

地域の中で

おかやま酪農協女性部  原野 周子

「おはよう おばあちゃん元気?」
「今度の金曜日はリハビリ教室があるよ」こんな会話を交わす日々です。
 日中に出会う近所の人々の中では,未だに私が一番若いです。
 かつて,我が家は行き止まりの小高い丘に牛舎があって,みんなに「寂しくないの?」と聞かれたものです。だから何かと地域の人たちとつながりを持ちたいと思っていました。そんな思いでいたところ「周子さんは家にいるんだから」とか「若いんだから」とか「1ヶ月に2回だから」とか言われ,心の中では,私も働いているんだけど……と思いながら,まあいいかと引き受けたお役や趣味のお付き合いで結構出かけることが多くなりました。
 「みんなと仲良うしてもらうことはええことじゃ。仕事がら近所の人たちに迷惑をかけることもあるし」と理解してくれている主人ですが,たまには苦情も出ます。でも,そんな時には「別に浮気をしょうるいうんじゃないし,ええ事をしょんじゃから」と主人の仲良しの授精師さんの応援ももらったりして,毎日いろいろなことに励んでいます。
 いろんな活動の中で牛乳はとても重宝しています。「やっぱり搾りたての牛乳はおいしい」との賛辞はもちろんのこと,夏にはカルピスより少し酸味をおさえた手作りの乳酸飲料は,まろやかでおいしいと好評です。お正月に七草がゆを牛乳で作ってみたところ,牛乳嫌いのおばあちゃんが気づかずに食べてくれました。以来,毎年老人会で牛乳入り七草がゆは恒例行事になりました。
 「魚を牛乳に漬けてから料理をしたら,ぜんぜん臭うのうておいしかったわぁ。牛乳のあんな使い方を初めて知った」と料理講習のあと実践の報告をしてくれる人もいます。女性部の活動で教えてもらったことが地域の中で役に立って,私も少しは牛乳の普及に貢献できているかなとか自己満足しています。
 牛乳も飲んだり食べるばかりではなくて,春先には婦人会でごきぶり団子を作って全戸に配って喜んでもらっています。これは本当に良く効きます。やっぱ牛乳は優れもの,と毎年感心します。
 また,老人会活動で地元でたくさん採れるレッドキャベツの煮汁を使って,染色をすることにしました。安価に仕上げるためにサラシ綿を使うことになりました。絹なら見事な淡いブルーに染まるのですがサラシ綿では染まりません。でも,サラシ綿を一度牛乳に浸してから染めるとギンガムのような色に染まり,渋い絞り染めができあがりました。「やっぱ牛乳でしょ。」
 牛乳パックでは小さな座椅子を作りました。牛のビタミン剤の容器で人形を作ったり,なんでもクラフトの材料として数十人分ため込むので家の中がキチンと片づかず,家族のひんしゅくを買っています。でも,平気,平気。
 女性部活動の環境美化運動で,初めて知った花づくりにボランティアとして季節の花々を仲間と楽しんでいます。
 おじいちゃんおばあちゃんと仲良くなれたから,今度は子育て支援……?とにかく地域の中でみんなと明るく元気に過ごしたいと思っています。
 かつて,我が家の子供たちが幼い頃,よく牛の絵を描いたり,工作といえば牛を作ったりしましたが,私にとってもやっぱり牛と牛乳が1番。いつでも,どこでも何をするときも牛と牛乳のことは体に染みついています。これからも主人の許しを最大限にもらいながら,地域の中を走りまわりたいと思います。