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高病原性鳥インフルエンザ T

岡山県農林水産部畜産課

1 はじめに

 高病原性鳥インフルエンザは、その伝染力の強さ、高致死性を示す病性等から、養鶏産業に及ぼす影響は甚大で、ひとたび発生すると、国あるいは地域ごとに家きんやその他生産物等に厳しい移動制限がかけられるため、国際的に最も警戒すべき家畜伝染病の一つとして、その制圧と感染拡大防止が図られています。
 また、1997年の香港における鳥インフルエンザウィルス(H5N1亜型)のヒトへの致命的な感染被害が確認されて以来、公衆衛生の観点からも非常に重要な疾病として注目されるようになり、現在最も警戒すべき家きん疾病となっています。

2 発生及び対応状況

 我が国では、1925年(大正14年)の発生以降、本病の発生はなく、2004年1月山口での発生は、79年ぶりでした。
 近年、本病は世界各国で発生がみられており、2002年はチリ、香港、イタリア等、2003年にはオランダ、ベルギー、ドイツ、香港、韓国等で発生しており、農林水産省は、昨年9月「高病原性鳥インフルエンザ防疫マニュアル」を作成し、発生に備えた体制整備を図っていました。
 本県でも、このマニュアルに従い、9月から県内5カ所でモニタリング検査を実施して、監視体制を整備強化していました。
 本年1月12日山口県阿東町の採卵養鶏場で発生報告があり、以降、大分県の愛玩鳥、京都府の採卵養鶏場及び肉用鶏飼養農場など4例の発生を確認し、約27万5千羽が犠牲となりました。
 現地では、高病原性鳥インフルエンザ防疫マニュアルに基づき、ウィルスに感染した鶏の殺処分、死亡鶏及び汚染物品の埋却、消毒などが行われ、あわせて、本病を広げるおそれのある家きん及び物品の移動制限とGPセンター・食鳥処理場の閉鎖等が、まん延防止のため実施されました。移動制限は、区域内における清浄性を確認し、順次解除され、平成16年4月13日午前0時をもって京都府における移動制限が解除された後は、現在まで国内での発生は見られていません。
 発生に伴う防疫対応を通じて明らかとなった課題に対し、農林水産省では、本年6月家畜伝染病予防法を改正し、発生時の届出義務違反に対する罰則強化と移動制限に協力した農家に対する助成の制度化等の措置が講じられるようになりました。
 県内では、山口県での発生報告以降、緊急の立入検査を実施し、異常のないことを確認し、その後も養鶏場等への立入検査と併せ死亡野鳥等の病性鑑定を実施し清浄性確認を継続するとともに養鶏場における緊急一斉消毒の実施及び啓発用ちらしの配布等により、消毒の徹底と衛生対策について啓発し、4月23日、京都府の移動制限の解除と環境省が全国的に実施した野鳥(カラス・ドバト)の病性鑑定結果において全て陰性であったことから、死亡野鳥等の病性鑑定については中止し、現在、立入検査とサーベイランス調査を継続し、清浄性確認を継続しています。
 アジア地域においては、7月中国及びタイで、8月マレーシア(亜型H5:弱毒タイプ)での発生が報告されており、引き続き異常発見時の早期報告体制を継続するため、同法第52条に基づく飼養者からの死亡羽数報告について、現在も実施されています。

3 症  状

 本病の症状は多様で、主要なものは、突然の死亡、呼吸器症状(咳、くしゃみ、呼吸音の異常)、顔面・とさかなどの腫れとチアノーゼ、脚部の皮下出血、産卵率の低下もしくは産卵停止、神経症状、緑色下痢便、飼料飲水摂取量の低下等となっています。
 国内で発生した4例においては、死亡羽数の増加が特徴で、山口の発生では、緑色便、嗜眠についても突然死とあわせ報告されています。
 まん延を防止し、被害を最小限に食い止めるためには、異常の早期発見と報告が重要であり、今後とも飼養者の皆様の協力をお願いします。


とさかの出血


顔面のはれ


脚部皮下の出血

4 養鶏農家の皆様に

 農水省の感染経路究明チームの報告によると「ウィルスは、渡り鳥により我が国に持ち込まれ、スズメ、カラス、人、水、ネズミなどをつうじ鶏舎内に持ち込まれた可能性が否定できない」との報告がなされています。
 感染を予防するため、次のことに注意してください。

 ア 養鶏場での野鳥との接触防止
   防鳥ネット、金網等の設置、点検・補修
 イ 水及び飼料の汚染防止
  ・給水は飲用に適したものか、消毒したものを用い、野鳥等の接触が考えられる生水は与えない。
  ・飼料は、野鳥やネズミが侵入しない場所に保管する。
 ウ 人によるウィルス侵入防止
  ・飼養者への衛生管理教育を実施するとともに、場内作業の動きの適正化や作業記録の徹底を行う。
  ・養鶏場への出入り口等への消毒槽設置や車両消毒の徹底
 エ 鶏の状態をよく観察し、異常を認めたら直ちに最寄りの家畜保健衛生所にご連絡ください。