ホーム > 岡山畜産便り > 岡山畜産便り2004年10月号 > 〔振興局だより〕堆肥散布活動とうまい米づくり in 矢掛町

〔振興局だより〕

堆肥散布活動とうまい米づくり in 矢掛町

井笠地方振興局 畜産班 山内 章江

 平成15年10月21日、「午後から堆肥を散布すると連絡がありました!」矢掛町農林課でこの活動を勧めてきた妹尾主査からの嬉しい連絡が振興局へ入った。
 矢掛町では、平成15年度堆肥利用ネットワーク活用事業の耕種農家への堆肥散布活動に取り組んでいる。その第一回の堆肥散布の連絡である。
 きっかけは、平成15年春、矢掛町認定農業者会議において、佐伯稔会長の「町内の堆肥を使おうじゃないか」のかけ声であった。


左から矢掛町認定農業者協議会:佐伯会長、矢掛町堆肥利用散布組合:宮西さん、森本さん

 しかし、そうはいっても、どんな堆肥を散布するのか、実際に散布できるのか、いろいろな不安があった。そこで、堆肥散布に興味のある耕種農家の矢掛町認定農業者協議会と、畜産農家の矢掛町堆肥利用散布組合が協議を進めていくことになった。
 協議の中では、実際に堆肥製造現場を視察に行ったり、堆肥散布の実演を見学したりした。また、少しでも使って試してもらおうと堆肥のサンプルを配布したりもした。このように話だけでなく、体験を踏まえて、耕種農家側からこれなら散布しても大丈夫という返事をもらった。
 しかし、次の課題が出てきた。

 1 事業で散布補助に取り組むなら、どこが事業主体になるか。
 2 だれの堆肥を利用するか。
 3 だれが散布するか。
 4 散布する機械はどれを使うか。
 5 散布場所・面積はどれくらいか。
 6 散布時期はいつ頃がよいか。
 7 どれくらいの量を散布するか。
 8 散布料金について

 これらの課題をひとつひとつ耕種農家と畜産農家同士が話し合って決めていった。
 1〜4については、矢掛町堆肥利用散布組合で、5については矢掛町認定農業者協議会で対応することになった。また、6、7については、井笠農業改良普及センターから指導を受けることになった。最後の課題が8の散布料金である。県内でも堆肥センターが散布を実施するところはあっても、農家段階で実施しているところは少ないため、料金の目安がつけにくかった。そのため、だいたいの金額を耕種・畜産で出し合い、協議をした結果、次のように決まった。

平成15年度 田 10aあたり2t散布
堆肥料金
 1,500円/t×2t/10a=3,000円/10a(@)
  ※15年度、500円/t値引きする
 500円/t×2t/10a=1,000円/10a(A)
散布料金
 1,500円/t×2t/10a=3,000円/10a(B)
合計:10a(2t)あたりの堆肥・散布料金
5,000円(=@−A+B)

 そして、第一回の堆肥散布が10月21日と決まった。
 皆が待ちに待った当日の朝、空をみると雨。。。延期になるか、いや、これくらいの雨なら皆さん平気で「やっちゃらー!」と始められるか。できればスタートを切ってほしい。でも、これから翌年の春まで散布は続くので無理はいけない。など胸中入り交じる中、文頭の連絡である。「やった!」始まった!雨がやみ、光がさしはじめた中、矢掛町の散布場所へ向かった。
 平成16年3月。今年度の堆肥散布面積639a、散布量124tが無事終了した。この活動は16年度も引き続き取り組むことになっており、この文章が出る頃には散布の準備開始となっていることだろう。(16年度計画:面積780a、散布量156t)
 こういった活動を見た町内の別の耕種農家が、「わしとこも、それなら撒いてくれ。」と散布が広がっていることや、耕種農家側で畜産堆肥を利用し減農薬で作った生産者の顔が見えるブランド米の生産を目指したいといった嬉しい話も出ている。
 また、16年度は町内の別の農家組合も新たに散布活動を始める。この組合は今年スタートなので、無事散布が進むことを祈っている。
 このように米どころ矢掛町では、畜産農家と耕種農家が一体となって、堆肥散布利用とうまい米づくりを目指している。
 余談:食いしん坊の筆者は、昨年堆肥散布してできたうまい米を食べるぞ!と楽しみにしている今日この頃である。