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〔技術のページ〕

「哺育・育成技術」全共に向けて

岡山県総合畜産センター 大家畜部 小田 頼政

 平成12年の岡山全共では、非常に良い成績を収めることができましたが、これは牛たちの能力もさることながら、酪農家の皆さん一人一人の努力による結果ではないでしょうか。
 平成17年に栃木県で開催される第12回ホルスタイン及び第4回ジャージー共進会まで、あと1年あまりとなりました。ホルスタイン種の第1〜3部、ジャージー種の第1部については、今現在、生後5ヶ月以下でまだ分娩していない牛も対象になります。これから全共に向けて大きく育てていくために「哺育・育成技術について」について、センターでの管理方法を中心にポイントをまとめてみました。

1.出生直後の管理

 1 呼吸の確保
   分娩直後の子牛は、鼻や気道に粘液を詰まらせたり、羊水を飲んでいることがあります。特に、逆子で分娩した牛はその可能性が大です。そこで後肢をロープで吊り逆さにし粘液や羊水をはき出させることにより呼吸を確保します。子牛が鳴くまで吊しておきますが、鳴かない場合は5分〜10分を限度として降ろします。
 2 臍帯とその周囲の消毒
   臍帯炎を予防するため子牛を吊っている間に臍帯を消毒します。
   古い注射器にシリコンゴムのチューブをつけたものを用意し、イソジン液50mlを臍帯部分へ注入します。臍帯が切れてしまったものについてはスプレーで噴霧します。
 3 子牛の体をよく拭く
   体温低下を防ぐため、羊水を拭き取り、体を乾燥させます。体を拭くことにより呼吸を助けたり、胎便排泄を促す効果もあります。
 4 カーフハッチ等への移動
   一刻も早く清潔で乾燥したカーフハッチ等に移し、衛生的な環境を確保します。
   よく牛床の後ろに子牛を繋いでいる農家を見かけますが、母牛の糞尿等に汚染されるため下痢が発生しやすくなります。
 5 初乳の給与
   分娩直後の子牛は、病原菌に対する抵抗力(免疫力)をほとんど持たずに生まれてきます。したがって、免疫グロブリンを豊富に含んでいる初乳の給与が極めて重要になります。
   畜産センターでは、分娩後1時間以内に最低でも2gを給与することを基本とし、さらに12時間以内に2gを給与しています。子牛がいやがったり、吸う力が弱かったりして初乳を飲まない場合にはカテーテル(ストマックチューブ)で強制的に給与するようにしています。

2.離乳までの管理

 1 代用乳の給与
   母牛の乳は分娩後5日間は出荷できません。子牛にはこの乳を1回2g1日2回給与します。5日目以降は、代用乳を給与します。離乳する時期については、通常人工乳(スターター)を3日連続で毎日1s摂取可能になった頃といわれており、だいたい1ヶ月前後が目安となりますが、畜産センターでは、代用乳を少し長めに給与しており、だいたい2ヶ月前後で離乳しています。
 2 人工乳(スターター)の給与
   離乳を成功させるためには、早期から第1胃の発達を促すために、この頃からの固形飼料と水の給与が重要といわれています。畜産センターでは生後1週間たったら人工乳の慣らし給与を開始します。
   はじめは、口の中に数粒入れてやり、味にならしていきます。水もこのころから給与し、朝夕の2回1g程度を給与しています。
 3 哺乳方法
   哺乳は、温度は40℃前後とし一定の温度で、一定の時間に給与すると下痢を少なくできます。また、乳酸菌製剤等を添加するのも下痢予防のためには有効です。
   畜産センターでは、3種類の生菌が配合されている乳酸菌製剤(ビオスリー)を代用乳を給与するたびに10gぐらい添加して給与しています。
 4 乾草給与
   乾草は生後1週間目からルーサンをほんの少しずつ給与開始し、離乳までは1日あたり約200g程度給与しています。
 5 下痢対策
   子牛の下痢は、急激な体力の消耗と衰弱をともない、その後の発育に大きなダメージを与えるので早く発見し早く回復させる必要があります。
   軟便程度であれば、代用乳の給与は中止せず、ひどい下痢(水様性下痢)の場合は代用乳の給与を中止し、電解質を1日2回各2g給与しています。脱水症状があるときは、補液も実施します。畜産センターでは、コクシジウム等の原虫症による下痢の発生が多いので、下痢をしたときにはサルファ剤(エクテシン液)の経口投与(1回10mlを1日2回、3日間)も行っています。
   子牛の下痢は、原因(病原微生物)と症状を発現させる誘因(環境)が相まって発病します。したがって、原因と誘因をできるだけ減少させることが下痢を減少させる第一歩となります。
   このため、子牛の住環境をいかにきれいにするかが重要となります。畜産センターでは、子牛を移動したら動力噴霧器でひととおり洗浄し、その後消毒剤(ネオクレハゾール)で消毒を行うこととしています。

3.離乳以降の管理

 1 飼料給与
   人工乳給与は1日2sとし、乾草は、ルーサンを500g〜1s程度とチモシーを飽食で給与しています。
   育成期は、いかにして早く大きくするかがが重要になります。肢蹄が長く、体高が高く、のびのびとした牛に育てていきます。胸垂に脂肪が付いたものや丸っこい感じの牛はエネルギーが多すぎるため濃厚飼料の給与量を制限してやる必要があります。
 2 子牛用ケージからの移動
   離乳したら、ケージから子牛ペンへ移動し2頭飼いのグループ飼いを始めます。
   グループで競争させることにより、採食量の増加が見込まれます。
 3 発育の目安

   ホルスタイン種雌牛の月別標準発育値の標準範囲の上限は、表のとおりですが、全共へはもう一回り二回り大きな目標を目指しましょう。
 4 運 動
   パドック等での運動は、骨格や足・腰の健全な発育を促進することができます。
   引き運動を始めるときに言うことを聞かない場合、子牛または育成牛を頭絡をつけて繋いでおき、その後牛舎につれてかえって水を給与すると、だんだん慣れて頭絡に従う様になります。

 全共に勝つためには、いかにボデイサイズと肋の張りを持つ牛を作るかがポイントと考えられることから、哺育・育成期の管理は最も重要と考えられます。全共まで後1年あまりとなりましたが、名誉賞目指してがんばりましょう。