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〔共済連だより〕

家畜診療日誌

真庭家畜診療所 蒜山支所 西山 篤

 「10年一昔」とよく言われるが、私たち共済獣医師にとっても酪農家にとっても10年前とは環境が大きく変化してきた。特に酪農家では乳質改善において変化があったように思われる。以前には、乳脂肪・無脂固形をよくすればよかった。現在では、乳汁中体細胞数にペナルティーが科せられ30万以下を保つことにあくせくしている。ここ数年ビタミン剤・強肝剤等の添加剤を投与することで体細胞数の減少に力とお金をそそいできたように思われる。私も色々な添加剤を酪農家に勧め、一時的には体細胞数は減少したこともあるがまた30万以上に上昇することがほとんどであった。こんな一時しのぎでは乳質改善にはならないのではと思い、蒜山地区において関係機関・酪農家一丸となって平成15年度より黄色ブドウ球菌(SA)の摘発と搾乳立会を行ってきた。その結果しだいに体細胞数の減少がみられるようになった。その取り組みについて紹介します。

 関係機関:おか酪・蒜酪・家畜保健所・家畜診療所
 1 バルク乳のSA検査。
 2 SA陽性農家で搾乳立会(搾乳における問題点の洗いだし)・SAの全頭検査。
 3 翌週に酪農家において搾乳における問題点の改善指導。SA感染牛を最後に搾乳することの指導(牛の並び替え)。
 4 SA感染牛の乾乳期治療の指導。

 この取り組みの中、やはり搾乳においてかなりの問題点が確認された。
 なぜ前搾りしないの?・・めんどうだから。なぜ前搾りが乳頭清拭のあとなの?・・乳頭がきたないから手がよごれる。なぜストリップカップを使用しないの?・・めんどうだから。なぜ乳頭清拭タオルが1頭1布でないの?・・バケツで洗うから2枚あればいい。乳頭清拭からユニット装着までの時間が長いよ。・・そうかな。なぜマシンストリッピングをするの?・・乳が残っていて乳房炎になるから。などのやりとりをしながら、その一つ一つについて納得してもらい、搾乳方法の改善を行ってきた。その中でも特に前搾りから1分30秒〜2分でユニット装着を行うように指導した(オキシトシンをうまく利用して搾乳し、搾乳時間を短縮)。
 またSAは、体細胞数が常に30万以上の高い牛に多く確認された。このことよりSAを蔓延させることも体細胞数の上昇につながるものであることも認識した。ただ注意が必要なのは、体細胞数が10万に満たない牛にもSA感染があること。また初産牛でもすでにSAに感染しているものもいること。これらの牛が搾乳を介して他の牛に感染させないことも重要である。
 搾乳方法の改善はお金がかからない、しかし今まで身に付いている搾乳方法の変更は酪農家にとっては大変なことであろうが、是非推奨されている搾乳方法に改善していただきたい。今後も関係機関と協力し乳質改善を行っていきたい。獣医師としての新たなる仕事かな?