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〔共済連だより〕

家畜診療日誌

家畜臨床研修所  谷 孝介

 削蹄の推進に家畜臨床研修所では,岡山県装削蹄師会の事務を行っています。
 岡山県装削蹄師会は,吉原輝夫会長(津山)のもと35名の削蹄師が牛の護蹄に活躍されています。
 本会は平成4年に設立され,装削蹄および護蹄の普及と削蹄技術の向上を図るため,酪農大学校(酪大)を会場とした講習会や認定試験,県総合畜産センター(総畜)を会場とした削蹄競技大会,酪大および総畜の牛の削蹄による会員の技術向上や親睦を図っています。
 平成15年度の活動状況…
 牛削蹄師の認定試験合格者は23名,その内の大部分は酪大の学生で今後の活躍が期待されます。
 削蹄競技大会では,平井計行氏(高梁)が全国大会で第三位に入賞されました。
 酪大では6名の削蹄師により30〜40頭のジャージ種を主体に削蹄。特にジャージ種の削蹄では過削に注意し,蹄を長く(他の品種と比べ)保った削蹄を行い,放牧に耐える削蹄に努められていました(写真1)。
 総畜では20〜30頭のホルスタイン種を主体に削蹄。蹄は,つなぎ飼いのため蹄底が乾燥し硬いため,ガスバーナの炎を当て蹄底を少し軟らかくしては削蹄鎌により削蹄を行う作業を繰り返しながら徐々に削っていました。枠場を利用した削蹄では,小型の電動チェーンブロックにより蹄を持ち上げるためのロープを張り,電動削蹄器により1頭10〜15分程度のハイスピードで削蹄を行っていました。
 削蹄師は,この様な研修をとおし削蹄技術の習得に努めていますが,家畜共済では関節炎による廃用頭数が依然トップ状態に有り,…飛節周囲炎の発生に先行して「初めに蹄異常ありき。」のように…蹄病への対応の遅れから乳牛の寿命が縮められています。
 蹄病の発生では特に,蹄底潰瘍や蹄球ビランの発生が多くみられます。
 削蹄による生産性向上に及ぼす効果は最近の調査研究によると,
 1)粗飼料摂取量が増すことによりエネルギー摂取量が増加します。従ってルーメンサイズの拡大を認めます。
 2)乳量や乳脂量,体重の増加が認められます。また蹄病の発生は,明確な乳量の減少が認められます。
 3)削蹄を定期的に励行して生産性の向上を期待するためには,蹄病の罹患歴がない牛群であることが重要であることが明らかとなりました。
 4)調査結果をみると,26頭を半年間隔で削蹄を5回連続して実施し,蹄病が全く認められなかった牛は12頭。1回以上蹄病が認められた牛は14頭でした。「蹄病歴なし」の12頭では,305日乳量が通算2,240kg/頭の増加,「蹄病歴あり」では515kg/頭の減少を示しました。
 以上のことより,乳牛の蹄病は2年半の期間で50%以上に発生し,生涯乳量の減少に影響していることが証明されました。
 『蹄』の異常に対して更に注意を払う必要を感じました。
 削蹄の依頼は家畜診療所へ連絡くだされば,削蹄師へ連絡を取り早急な削蹄の実施に努めます。