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〔普及現場から〕

シート等を利用した簡易な堆肥化処理管理の現場実証

高梁農業改良普及センター

1 はじめに

 「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が昨年11月から完全施行されています。対象となる管内の畜産農家はそれまでに補助事業等を活用し、家畜ふん尿の処理管理施設を整備する等、環境負荷に配慮した持続的畜産経営の確立に努めてきました。
 当普及センターも市役所等関係機関と連携し、乳牛等のふん尿の適正な処理・利用管理技術確立の一助にと、農地への還元利用を前提として(堆肥被覆)シート等を利用した簡易で低コストな堆肥化促進技術の現地実証を昨年度から高梁大池山育成牧場で実施しています。今回はこれまでの取り組みの状況等を紹介します。

2 堆肥被覆シート活用のねらい

 ふん尿は環境を汚さないよう、必要な管理・腐熟(堆肥化)処理をし、有機資源(土づくり資材)として有効活用することが基本となります。
 そのようなふん尿処理のうちでシートを堆肥舎等の補完施設として利用する際の実用性を検討するため、育成牧場内で実際に市販の被覆シートを使って牛ふんを堆積し腐熟の進行具合等を調査しました。

3 実証の方法と調査内容

 (1) 平成15年度は草地への進入道路(アスファルト舗装)を一部盛土で囲った場所に、平成16年度は草地に設置した遮水シート(7.2m×12m)の上に、副資材等を加えた牛ふん(※3種類)を堆積、被覆シートで覆い(堆肥表面から深さ30〜40pの部位の)温度変化を経時的に測定しました。
 ※3種類の堆肥化材料の具体的な内容等
  @育成牧場の哺育・育成牛舎からボロ出しした物で、子牛のふん尿に敷料のオガクズや乾草の残飼が混ざっており取り扱いは容易で比較的高く積めます。
  A一般的な酪農家のバーンクリーナー等で排出した搾乳牛のふんへ、モミガラ・乾草の残飼等を堆積時に人力で3割程度混ぜた物であまり高くは積めません。


写真1 人力で堆肥の山づくり

  B前述の搾乳牛ふんを3(容量比で)モミガラを2の割合でマニュアスプレッダーを使って混合調整しシート上に堆積した物です。


写真2 マニュアスプレッダーで混合堆肥づくり

 (2) その際、あらかじめシート上にモミガラを5p厚に敷き、さらに古い低水分牧草ベールをほぐし10p程度の層を作りました。


写真3 シート上へモミガラとベールを敷く

 また、この牧草ベールで高さ50pほどの小山(芯)を造り、その上に調整した材料を積み上げた山(高さ1.2m程度)と通気管(暗渠排水用の資材を活用)を2本貫通させた山の2つを被覆シート(6×12m)で覆い、古タイヤで周囲を押さえました。


写真4 通気管を埋設

写真5 シート実証状況

 (3) さらに、防除対象雑草の主体であるギシギシの種子を堆積物の数カ所に埋設し、2ヵ月後に掘り出して発芽調査を実施しています。

4 結果と課題

 (1) 立ち上がりの温度上昇パターンとその後の経過に、3種類の堆積物や方法等で若干の違いは見られましたが全体的な傾向としては、スタートして2日目〜12日目にピークに達し、その後漸減しています。
 真冬と秋に実施しましたが、外気温の差の影響はさほど無かったと思われます。
 上昇温度は最高で52℃(〜42℃)で期待した60℃以上にはいずれも達しませんでした。
 (2) 平成16年度はシート上で堆積物の切り返しを試みましたが、遮水シートの破損(継ぎ目が一部剥がれ地面が露出)によりその場での作業続行を断念、既設の堆肥舎へ積み替えたところ60℃の温度 上昇が確認され、現在も調査を継続しています。
 (3) 回収したギシギシの種子は今も発芽試験中ですがかなり芽が出ています。
 つまり、種子が死滅する温度に上昇してない(腐熟が充分でない)堆肥をほ場に施用するということは雑草の繁茂を助長している、という事実が確認されたわけです。
 (4) また、通気管を通して積み上げた山の堆積物には、管の周辺部と遠位部とで明らかに違い(好気状態と嫌気状態)が観察されました。
 (5) これらの結果と各種技術情報から、シート等を使って腐熟化促進を図るには堆積スタート時のかさ密度・水分等の調整を充分行うことが重要なポイントと思われます。
  ※充分とは、かさ密度 0.5t/m3以下、水分65〜60%に調整すること(通常の堆肥舎なら、かさ密度0.7、水分70%程度で、切り返しを前提)です。
 (6) さらに、雨水の混入や排汁の拡散防止対策(盛土や小排水路等)は必須で、これを怠るとほ場還元するまでの貯蔵(留)管理の目的が達成されません。

5 おわりに

 シート等を利用した簡易で低コスト(今回使用したシートの価格は@240〜@420/u)な処理技術は、条件が整えば試験研究データにもあるように通常の堆肥化同様に温度上昇を伴った腐熟がみられるようです。
 しかし、実際の牧場現場等でふん尿・排汁を漏らさず管理するという大原則を守りながら、各農家の実態に合わせて(補完的な)使い方や構造等、工夫や検討を要すべき点が多くあるようで、さらなる実証に取り組んでいきたいと考えてます。