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〔共済連便り〕

家畜診療日誌

勝英家畜診療所  山本 武広

 岡山県農業共済組合連合会獣医師となり、もうすぐ1年が経ちます。大学生活は寮だったので卒業して本格的にひとり暮らしとなり、気ままな反面、寂しさを感じています。
 仕事自体はまだまだ効率悪く、一人前には遠いのですが、今畜産便りに投稿機会を頂いたので、1年目の自分を振り返ってみようと思います。
 僕は、北海道のR大学を卒業しました。6年間酪農地帯という環境にいましたが、酪農については知らない事が多く、現場で教えられ、右往左往しています。学生時代の僕にとって牛は、乾草を食べて、乳を出して、たくさん排糞する大学のマスコット位でした。
 ところが就職して牛を目の前にすると、分娩に始まり泌乳を開始し、病気を発症してゆく姿をみることにより1頭1頭が随分と大きな仕事をしているのだと改めて感じました。昨年の夏は暑さによってガタガタになっている牛を診て、なんだかポンコツの機械を見る様で家畜としての一面を何とも物悲しく思いました。
 半年間は先輩方に同行し、臨床獣医師としての第一歩を踏み出しました。最初は臨床現場での戸惑いがあり、処置等について習うときも足を引っ張ることが多く、現場にはなかなか慣れませんでした。獣医師というのは人の所有する動物に対して医療行為が許されるのですが、それでも畜主の財産と考えると、仕事として牛に触れるのは大学と違いひどく緊張しました。
 しかし、1人で農家を回り始めると、そんな悠長なことは言えません。ひとりで行くと牛を捕まえなければ診療もできないし、治療もできない。臨床現場に行けば否応なく自分の尻に火がつき、そういえば先輩方はどうしていたかと必死で思いだしながら、保定をします。当然不完全な事が多く、注射するにも随分と苦戦しました。後に残ったのは腫れた首にたくさんの注射跡。頭の中には手際の悪さ、加えて治療はあれで良かったのかといった自問自答、不安を引き出しては先輩に相談していました。とにかく不安が影のようにまとわりついていました。
 客観的に考えれば初めは誰しも失敗するのでそれを恐れていてはキリがないのですが、自分がその中にいると脱するのは難しいと感じます。何か振り返ると情けない思い出しかないのですが、それでも中には励みになる事もあって、食欲旺盛な牛がうまそうに乾草を食べていたり、尻尾をふりふり子牛が元気にミルクを飲む姿は元気を与えてくれます。それが自分の治療した牛ならちょっと自信も沸いてきます。
 この一年を振り返るとなかなか手厳しいものでした。今後も課題は多く、気後れすることも多いでしょうが、1日1日を臨床獣医師として成長していきたいと思います。