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〔技術のページ〕

おかやま黒豚の赤肉生産量の向上に向けて

岡山県総合畜産センター 環境家畜部  佐野 通

1 はじめに

 近年、地産池消が推奨される中、岡山県では純粋バークシャー種(以下B種)である「おかやま黒豚」の産地拡大と銘柄化を推進しています。しかし、おかやま黒豚の問題点(岡山畜産便り2003 11・12号に掲載)として、県営地方食肉市場(以下市場)における枝肉格付検査で、背脂肪厚が厚く格落ちとなる個体が多いことやロース断面積の著しく小さい個体が散見されることが指摘されています。そこで、おかやま黒豚の給与飼料を検討することによりこれらの問題点の改善を図りました。
 試験概要の前に豚の成長の仕組みについて説明します。豚はエネルギーとアミノ酸を使って赤肉を作ります。そして、豚の体内で合成できない必須アミノ酸は10種類ありますが、中でも穀物を主な飼料資源としている豚の飼料ではリジンが第一制限アミノ酸であると言われています。したがって、飼料中のリジンが欠乏した時点で、豚の赤肉生産は中止され、残りのアミノ酸は尿中に排泄されて、過剰なエネルギーは脂肪として蓄積されてしまいます。そこで、飼料中のME(代謝エネルギー)に対するリジンの割合を高めることで、背脂肪厚のコントロールおよびロース断面積の拡大を目的として試験を実施しました。

2 試験概要

 日本飼養標準・豚(1998年版)の要求量(対照区)に対し、表1のようにTDN(エネルギー)を一定にして給与ステージごとのLysine/ME比を高めた試験区(試験区1および試験区2)を設け、各区にB種の去勢豚および雌豚各7〜8頭を配置しました。

表1 試験区の設定

3 試験結果

 去勢豚では、図1および図2のように、対照区と比較してLysine/ME比を高めた試験区1および試験区2で背脂肪厚は薄くなり、ロース断面積は大きくなりました。


図1 背脂肪(去勢豚)

図2 ロース断面積

 雌豚では、図3および図4のように、対照区と比較して試験区1で背脂肪厚が薄くなりロース断面積が大きくなりましたが、更にLysine/ME比を高めた試験区2では逆に背脂肪厚が厚くなりました。


図3 背脂肪厚(雌豚)

図4 ロース断面積(雌豚)


背脂肪厚およびロース断面積の推移(雌豚)

 110s到達日齢およびロース部位の肉質成績については図5、表2のとおり差がありませんでした。


図5

表2 胸最長筋の肉質分析成績

4 まとめ

 今回の試験により、給与ステージごとに飼料中のLysine/ME比を高めることで、発育および肉質成績を低下させることなく産肉成績の向上(背脂肪厚のコントロールおよびロース断面積の拡大)を図れることがわかりました。これにより、現在問題となっている市場での枝肉成績のバラツキが改善される可能性が示唆されました。
 また雌豚では、Lysine/ME比が一定割合を越えると、逆に背脂肪厚が厚くなる等の成績が得られたので、今回の成績を基に最も効率の良い赤肉生産ができるよう、さらに詳細な設定での試験を現在実施中です。