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〔関係団体のページ〕

狂犬病対策の現状と課題について

岡山県獣医師会事務局

1.狂犬病の現状

 狂犬病は、狂犬病ウイルスの感染による人と動物の共通感染症である。
 すべてのほ乳類が感染し、人が感染し発症した場合、100%死亡することから、古来、人類にとって最も恐るべき感染症の1ツとされている。
 狂犬病は、いまだに米国、EU諸国をはじめ世界各国において発生がみられ、人においては、毎年3〜5万人の死亡例が報告されている。
 人の発生における感染源の多くは、感染犬やコウモリによる咬傷事故が原因とされ、犬をはじめとする動物に対する不断の予防対策が重要とされている。
 日本は、英国、豪州、台湾等とともに例外的な清浄国であるが、アジア諸国においては、インド、東南アジアをはじめ、中国、韓国においても毎年発生しており、中国においては、最近の犬飼育の普及等のペットブームを背景に狂犬病がまん延。昨年は9月までの死者が1,300人と急増したことが報告され、大きな社会問題となっている。

2.狂犬病対策の重要性

 日本における狂犬病は、動物、人ともに昭和32年以降、発生報告がなされていない。
 しかしながら、近年、人と物の国際交流、グローバル化が進展する中、狂犬病の侵入の機会は増大しており、一方、犬、猫等の家庭動物の飼育が普及し、ペット動物として広く国民生活に受け入れられている中、BSE、SARS、高病原性鳥インフルエンザの例をみるまでもなく、人と動物の共通感染症のなかでも最も注意を要する狂犬病に対する危機管理の備えが重要となっている。

3.日本における狂犬病対策

 狂犬病対策は、現在、
 ア.「発生予防対策」として@飼育犬の登録と定期予防注射A未登録犬の捕獲と抑留
 イ.「侵入防止対策」として、犬、猫等の特定動物に対する輸入検疫
 ウ.「発生時のまん延防止対策」として、@狂犬病感染動物の隔離A飼育犬の移動制限と一斉検診、強制予防注射等
 以上の動物に対する措置を狂犬病予防法に基づき実施することとされている。

4.狂犬病予防対策の課題

 日本のような狂犬病清浄国において実現すべき対策として重要なのは@海外からの感染動物の侵入防止を図るための輸入検疫とともにA国内対策として国内飼育動物の発生予防対策を徹底することにより狂犬病の侵入時のまん延防止に備えることである。
 しかしながら

 ア.「輸入検疫対策」については、平成12年度から犬に加え、猫、あらいぐま、スカンク、きつねが検疫対象動物に追加されたものの@依然として検疫対象は一部の動物であり、また、げっ歯類動物を中心とした野生動物対策が未整備であることAロシア船舶搭載犬に代表される未検疫動物の不法上陸が日常化しつつある等、現状の輸入検疫による侵入防止には自ずと限界がある。

 イ.一方、「発生予防対策」については近年、人と動物の共生が志向されることを背景として家庭犬の飼育頭数が順次拡大する中、飼育犬の全数把握としての登録と定期予防注射はいずれも周知、徹底されているとはみなし難く、予防注射実施率は実に49%程度の低水準にあると見込まれている。

 従って、今後とも、人に対する感染源対策として、最も重要な国内飼育犬に対する登録の徹底と定期予防注射を行うことにより、常時一定レベルの免疫付与を行い、狂犬病侵入時における動物間での流行防止と伝播経路の遮断のための措置を講じておく必要がある。
 なお、感染源となり得る動物に対する免疫の付与による流行の防止にはWHOガイドラインにおいて、少なくとも70%以上の免疫水準を常時確保する必要があるとされている。
 従って飼育犬に対する定期予防注射については、先ず、実施率70%以上の水準への早急な到達を実現させる必要がある。
 また、犬による咬傷事故は、毎年、届出だけでも6,000件以上が報告されているところであり、万一の侵入事態に遭遇した場合、現行の予防注射実施率では社会パニックを引き起こしかねない。

【関係資料】

1.犬の飼育頭数、登録頭数、予防注射頭数の推移(全国)

2.動物の輸入検疫頭数の推移(全国)単位:頭

3.犬の咬傷事故報告件数の推移(全国)

追記

1.狂犬病について、一般論的記述をさせていただいた。
2.岡山県下の犬飼養頭数は約140,000頭前後と推定。
3.予防注射実施率は全国平均よりかなり高い。
  但し、諸般の事情もあって正確な実施頭数が把握されていない。
4.岡山県下の犬の咬傷事故件数の推移

5.WHOガイドラインによれば、免疫水準70%が必要とされていることから実施率は80%前後は必要であり、不幸にして発生でもあれば、公共事業でありながら実効の上っていない現状では、BSE、高病原性鳥インフルエンザの発生以上の大混乱と経済的負担が懸念されるので、獣医師会は申すに及ばず、市町村その他関係機関揃って一層の啓蒙と努力が必要である。