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〔共済連だより〕

コクシジウム症から子牛を守りましょう

岡山中部家畜診療所 日下 知加久

 牛のコクシジウム症は,古くから知られていますが,発症率が増加傾向にあます。
 原因:牛のコクシジウム症の原因となるのは Eimeria 属の原虫で,15種類ほど知られている。
 症状:一般的に成牛の発症はまれ(近年,肥育牛では発症が増大傾向)で,多くの場合は不顕性感染です。しかし,子牛の感染においては時に下痢,血便などの重篤な症状を呈し,発育不良,斃死することもありその経済的損失は問題となっている。特に,線虫との混合感染によってその傾向が強いとされ,集団飼育などのストレスあるいは敷料としてオガクズの使用が発症の増大の要因になっているとされている。
 感染様式:感染してからおよそ18日で未成熟オーシスト(厚い殻に包まれた虫卵のようなもの)が糞便中に出てくる。未成熟オーシストは外界にでると2〜7日間で成熟オーシストとなり,この成熟オーシストを牛が摂取することにより感染が成立する。牛の消化管内に侵入したオーシストからスポロゾイト(種虫)が脱出し,腸粘膜上皮細胞内に進入します。腸内で増殖を繰り返し,最終的にオーシストが形成される。このオーシストが上皮細胞とともに放出され,糞便とともに体外に排出されさらなる感染源となる。
 治療:サルファ剤の投与が有用であるが,1回の投与で終わることなく,10日間隔での再投与が必須である(原虫側に薬剤に効果のないステージがあるため)。抗生物質は無効であり,症状に応じて対症療法も行う。
 予防:感染源であるコクシジウムのオーシストは,環境や薬剤に対して抵抗性が高いため,殺滅は容易ではない。畜舎・パドックなどの加熱やオルソ剤による消毒が有効ではあるが,感染源となる牛の糞を遮断することは不可能と言ってもいい。しかし,いくつかの予防・駆虫プログラムで効果が認められているので推奨します。

@ 母牛の分娩予定1ヵ月前に線虫を駆虫
  これによって母牛共々抵抗力・免疫力の向上をはかる。実際に実施している農家の方から『生まれてくる子牛が元気である』との意見がある。これは,子牛の売却利益が主となる和牛繁殖農家で有用と思われる。

A 混合飼料(サルトーゼ)の継続給与
  バチルス菌を主体とした数種類の有用菌と複数の活性酵素とを組み合わせたもので,動物の腸内で短時間に強力に作用し,有害細菌の抑制や飼料物質の消化吸収を促進させる作用がある。

B 牛のコクシジウム症は,血便が見られる以前の診断的治療あるいは予防的治療で効果が高いともいわれている。そこで,多頭飼育では,予防・治療プログラムが有効である。
 以上,上記の予防法を参考にして大事な子牛をコクシジウム症から守り,もって生まれた能力を,最大限に発揮できるように育てましょう。


コクシジウム症予防プログラム