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びほく農協管内(高梁市,旧北房町,旧賀陽町)は繁殖経営,肥育経営とも肉用牛生産が盛んな地域であり,肥育部門においては第7・8回全共(前々回,前回)に,管内から連続出品を果たしており,優秀な成績を納めています。
管内肥育農家では,ビタミンA(以下VA)コントロールにより肉質向上を図ろうとする意識が高まりつつあり,さらに第8回全共を機に,肉質向上と枝肉重量の向上を目的とした新しい飼料での飼養体系に切り替わりましたが,その反面過剰なVAコントロールにより盲目や関節の腫脹等VA欠乏症が見られ,大きな損失を招いていました。
そこで,平成15年度より第9回全共でのさらなる飛躍のため,「チャレンジ24効率的肥育技術向上対策事業」をびほく農協が事業主体となって取り組み,関係機関の協力を得て肥育農家を巡回,さらにVAレベルを測定することにより実態を把握し,飼養管理に対する指導を実施しています。 ここにその取り組みについて紹介します。
図 取り組み体制
(1) 農家巡回
関係機関が地域ごとでの3チームに分かれての定期巡回(月1回)により,専門的に各農家を指導し,飼養管理(牛の状態,残飼状況,衛生環境等)をチェックしています。
(2) VA値の測定
導入時,14ヶ月齢(濃厚飼料切り替え時期),17〜19ヶ月齢(濃厚飼料最大給与時期)を中心に各時期において,調査対象牛のVA値を測定することにより,各農家のVAレベルの実態を把握し,農家に説明の後,低すぎる個体にはVAを投与するなど指導しています。
指導風景
(3) 検討会の実施
巡回終了後の夕方,関係機関はただちに農協に集合し,各農家の状況(牛の健康状況,農場全体の管理状態,農家の意識レベル等),指導内容・課題について協議し,今後の指導方法について検討しています。また,農家を交えた検討会(研修会)も実施しています。
検討会風景
(4) 個別指導
(2)にもあるように,定期巡回の結果,VA欠乏症,飼料の切り替えの必要性等,緊急的な課題の認められた農家については,JA職員が迅速かつ綿密な指導を行います。
肥育農家と関係機関が連携して取り組んでいる農家巡回とVAコントロールの実践により,以前に比べ事故率が低下し,さらに,年10数回開催される枝肉共励会でも肉質,肉量の向上が,若干ではありますが認められています。
なによりも農家の意識が向上し,牛の状態を観察し,積極的に肥育技術の向上に取り組むようになったことが一番の成果です。
今後は調査を実施した牛の枝肉成績がさらに集積されることから,そのデータをさらに農家の技術向上へ反映させていきたいと考えています。
枝肉価格の堅調な今でこそ,肉質と肉量の両方を向上させる技術を身につけ,枝肉価格の不安定な時も健全な経営が持続できることが,今後の農家に必要なことだと考えられます。
「第9回鳥取全共の勝利の裏にはびほくの牛あり」と言われるよう,今後も関係者一丸となって取り組んでいきます。
懐中電灯を用いた瞳孔反射によるVA値の簡易検査を実施し,農家の庭先でも行えるような指導も行っています。(反応速度が遅いほどVA値が低いと推察)
簡易検査実施風景