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〔畜産農家の声〕

「今思うこと」

おかやま酪農業協同組合女性部 宮野 郁子

 私は,酪農家の三人姉妹の次女として生まれたので,当然姉が家を継ぐものと思っていました。
 そんな私が家を継ぐことになったのは高校卒業後の進路を決める時,私はヨーロッパにとても憧れていたので従姉妹と一緒にオランダ研修に行こうという事になったのです。でも,まったく酪農をしたことのない二人をオランダに行かすのは不安だからと言われ2年間酪農大学に行ってそれからだったらいいだろうということになったのです。
 酪農家の娘と言っても,搾乳などしたことのなかった私は,初めて搾乳をした時,牛が足を上げたことに驚き,泣いてしまいました。〈今から思えばちょっと足を動かした程度だったのですが。)2年間の大学生活で牛には慣れたのですが,とてもオランダまで行って酪農をする勇気がなく,結局オランダへの夢は消えてしまいました。
 大学卒業後,姉はさっさと嫁に行ってしまい,両親は口では「無理に酪農はせんでもええで。」と言いながら,心の中では継いでほしいと思っていたのでしょう。そんな思いが通じたのか,酪農家の次男で酪農が大好きな主人と縁あって結婚し,我が家の酪農を継ぐことになったのです。
 酪農大好きの主人は「牛舎にはいつも牛がいっぱいでないと。」が口ぐせで38頭牛舎を全頭搾れる様にし,それでも入らない牛は外に繋いでパケットで搾っていました。そんなに牛を増やして,これから二人でやっていけるだろうかと不安に思う私の気持ちとは裏腹に,それでも入らないので12頭牛舎を増築し,常時50頭搾れる様にしたのです。
 でもヨーロッパの牧歌的な酪農に憧れていた私は,こんな狭い牛舎に繋いで牛がかわいそうだと思っていたのです。
 そんなある日,主人が2週間のヨーロッパ研修に行ってみるかと言ってくれたのです。私にとって憧れのヨーロッパ。研修を終えて思ったのは,どんな所で牛を飼うにしても酪農に誇りを持っていればいいと今までの考えと大きく変わったのです。それにすばらしい人たちとめぐり合うことも出来,とても貴重な体験をさせてもらいました。幼い子供をおいての研修に心よく送り出してくれた家族に感謝です。
 人生には大きな節目があって私にとってこの研修がそうだった気がします。
 時には,仕事がきつく経営的に苦しかったこともあり,何度かやめたいと思ったこともありました。でも酪農の仕事が自分に合っている気がするし,子供達も学校が休みの日は仕事を手伝ってくれるようになり,親子で仕事が出来るのも酪農をしているおかげだと幸せを感じ,今では自分の人生これで良かったな,なんて思っています。まだ酪農に誇りが持てる自身はありませんが,これからはもっと努力して仕事にも趣味にもイキイキとした人生を歩んでいきたいです。