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〔普及の現場から〕

「牛尿の液肥利用について」

岡山県農業総合センター総合調整部
技術普及課旭分室

はじめに

 平成16年の「家畜排せつ物法」の施行により,家畜ふん尿の適正な管理と有効な利用が求められるようになりました。
 畜ふんは堆肥化処理施設の設置が進み効率的な管理と利用が各地で取り組まれるようになりましたが,尿等の液状物については,臭気対策や,液肥化処理方法などの技術の普及が望まれています。
 県内でも総合畜産センターで開発された簡易な曝気処理,臭気低減技術を導入して牛尿等の液肥利用が取り組まれています。
 ここでは県内外の牛尿利用の事例を紹介していき,各地域での耕畜連携推進の参考としていただきたいと思います。

群馬県畜産試験場の事例

 飼料イネ栽培への利用

 牛尿を基肥2t/10a及び追肥3t/10aの施用では牛尿無施肥区の2倍近い乾物収量があった。
 同じ施用量でも複数回にわけて施用することにより肥効は高まった。
 畦畔付近では弱い臭気が認められたが5m以上離れると臭気は消失した1)。

 岡山県総合畜産センターの事例

 牛尿を追肥として約0.5t/10aの施用で,慣行(化成肥料施用)区に比べ同程度の収量が得られ,追肥利用の可能性が認められた2)。

 佐賀県の事例

  水稲栽培への利用

 ヒノヒカリに元肥,追肥,穂肥としてN施用量 10.8s/10aを施用した。成育初期でやや葉色が薄い傾向にあったが,収穫期には化成肥料施用とほぼ変わらぬ生育となった。後半の肥切れがよく,登熟割合が高いことから収量・品質に優れ,良食味米の生産が期待できる。 
 尿中のO-157は陰性で,細菌数の調査結果からも衛生面での影響はないものと思われた。

  野菜:タマネギ栽培への利用

 マルチ栽培と路地栽培に区分し,液肥単用と堆肥・化成肥料施用等の区を比較した。2月下旬〜3月上旬に追肥として施用すれば,慣行と同等の収量が期待できる3)。

 以上のような事例からも,今まで取り扱いに苦慮していた尿も液肥として利用すれば化成肥料の代替として活用の範囲が広まることが期待されます。


写真1 岡山市西大寺地区における牛尿の施用


写真2 瀬戸内市における牛尿処理施設

参 考

1)須藤和久ら 2003 飼料イネ栽培における家畜尿液肥の利用 群馬県畜試研報第10 55−64
2)白石 誠ら 2004 飼料イネに対する牛尿の施用試験 岡山県総合畜産センター研究報告第14 71−76
3)吉岡秀樹 2001 佐賀県における家畜尿の有効利用について 畜産環境情報13 7−15