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〔県民局便り〕

山地酪農に夢をかけて

平成17年全国草地畜産コンクール
日本草地畜産種子協会長特別賞を受賞

赤磐市 岩本 忠可さん
岡山県備前県民局東備支局

 ここは、岡山県東南部、赤磐市西部にある大錫丈山腹(標高約250m)の岩本牧場。空の青、木々の緑の混じり合う牧歌的風景の中、幸せな牛たちがのびのびと草を食んでいます。経営主の岩本忠可さん(62歳)と奥さんの恒子さんはいつも明るい笑顔で私たちを迎えてくれます。
 岩本さんは、岡山大学農学部を卒業後、実家の農業を継ぐことを決心され、ドイツのブドウ農家へ1年間実習に行かれました。帰国後は、予定通り農業を営んでおられましたが、昭和44年、県営住宅団地の進出で経営基盤の大半を失い、農業の新天地を求めていたところ、ある新聞記事が目にとまりました。それは、「現代に生きる自然農法」と題した高知県で山地酪農を実践しておられた方の記事でした。早速、牧場を訪問したところ、自然の摂理を重んじる山地酪農に大変感動し、ドイツ研修時代に見たスイスアルプスの放牧風景も重なって、山地酪農への取り組みを決意されました。
 それからは、県外の山地酪農研修会に参加しながら熱心に勉強され、昭和46年、旧山陽町の力添えで、植林組合貸与地に入植し、育成牛を5頭導入しました。
 その後は、山地酪農講習会で学んだ事を信念に@外周を牧柵で囲い、まず牛を放すA成牛は導入しないB施設はなるべく自分で安く仕上げるC牧野造成は、機械開発ではなく、牛ととともに気長に進めること等を方針に山地酪農の基礎作りをしました。入植時、最初に採草放牧兼用地(2.5ha)の造成を行いました。急傾斜地は大型機械が入らないため、夫婦2人の力で雑灌木・有刺植物の刈払い、裸地への牧草種子の播種等を行い、年月をかけてやっと21haの放牧地造成をやり遂げました。草種については試行錯誤を重ねた結果、現在ではシバ型草種(センチピートグラス)を主とした放牧草地を形成しています。また、植生維持のため、ギシギシ等の外来雑草の侵入には特に注意を払っており、自作の草地管理地図に雑草の発生地点を記録し、見つけ次第除草剤のスポット処理をしています。その結果、「もし牧場内でギシギシを1本でも見つけたら懸賞金をあげる」と言われるくらい、立派な草地が完成しました。
 岩本さんは、平成17年全国草地畜産コンクールで会長特別賞を受賞され、一言、「絵になる風景を夢見て始めた山地酪農であるが、傾斜地の草地造成には思いのほか手間がかかり、経営面でも心血を注いできた。現在のように、安価に流通飼料が手に入る時代であれば、購入飼料の方が所得は上がる。けれども、なにが起こるかわからないのが世の常、万が一飼料の輸入が困難な状態になっても、山地酪農であれば壊滅的打撃が逃れられるかもしれない。その意味からも山地酪農の灯を消してはならないと思う。」と次世代を担う若者に厚いメッセージを送られました。


岩本さんご夫妻

 平成17年度全国草地畜産コンクール会長特別賞受賞おめでとうございます。