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〔共済連だより〕

家畜診療日誌

津山家畜診療所 大谷 香里

 風邪(肺炎)は様々なウイルスや細菌感染により毎年冬季を中心に発生することが多いのですが,今年は春先から夏季まで散発的に子牛の肺炎が発生しました。肺炎の集団発生には,換気不足や敷料の管理不良による有毒なアンモニアガスの発生などの環境要因が引き金となり細菌性肺炎を引き起こす場合と,ウイルスが飼育群内に侵入することにより肺炎を引き起こす場合の2つがあります。それでは哺乳子牛の肺炎をどうやって予防すればいいのでしょうか?

1 換気を十分できる様にする

 人が子牛の鼻の高さにしゃがんで10分間耐えることができなければ子牛に与える影響は大きい。アンモニア発生が低くても肺にダメージを与えるため,空気の流れと入れ替えは重要です。頭数の過密も避けなくてはいけません。

2 子牛を乾燥した状態にして敷料を十分敷いておく

 十分に乾燥した敷料を深々入れると寒い時には暖かく,暑い時には涼しくする効果があるのです。

3 十分なミルクを給与する

 通常は1日に約4リットルを2回に分けて給与されていますが,回数は多い方がストレスを与えないようです。

4 カーフハッチや独房で管理する

 唾液や鼻水は感染を引き起こす恐れがあるので,離乳までは子牛同士の接触を避けましょう。

5 母牛へのワクチン投与

 下痢や肺炎予防の混合ワクチンを接種することで発病を防ぐことができる場合があります。しかし,この免疫は初乳によってのみ与えられるので,初乳の給与と十分な量が必要です。

6 導入牛は極力避ける

 外部からの導入は病原体を持ち込む可能性があります。導入する場合,最低1週間は隔離して観察することを薦めます。

7 哺乳瓶やバケツの消毒と管理

 哺乳道具の消毒は病原体の伝染を防ぎます。
 乳首の穴が大きい場合,ミルクを飲み込むより速い速度でミルクが口に流れこみ,あふれたミルクの一部が気管から肺に入って誤嚥してしまいます。乳首の劣化や穴の大きさの管理が必要です。

8 離乳のストレスを最小限にする

 離乳はスターターの摂取量を確認してから開始する。離乳後も同じスターターを与え飼料の急変を避けましょう。

9 子牛へのワクチン投与

 離乳してグループ飼いに移る前にワクチン接種をしましょう。
 この9項目は生産獣医療や情報誌に掲載されていますが,牛舎環境や管理は農場によりさまざまです。子牛の疾病は下痢と肺炎の事故が最も多く,下痢の予防と合わせて行うことが,両方の疾病を抑えて発育良く元気な育成牛や肥育の素牛へとなるのです。
 冒頭の夏季でも肺炎発生が続いているのは細菌感染が原因で,鼻汁検査の依頼をしたところ細菌のマンヘミア(パスツレラ)が分離されました。この細菌は牛の移動・導入の輸送,離乳,暑熱等のストレスによりウイルスや他の病原体との複合感染や単独感染で呼吸器症状を発症させます。ある調査ではこの細菌の関与による肺炎は斃死率が最も高いと報告されています。対策としては環境の改善とワクチン投与です。接種時期は,初乳免疫が消失する3ヶ月齢前後が薦められています。しかし子牛の肺炎症状は3ヶ月以前に発病することが多く,若齢牛ほど重症化していますので生後1ヶ月前後のワクチン接種が良いのではないかと報告されています。しかし発病の原因や時期は地域や農場ごといろいろでありワクチンの効果を最大限に得るため,それぞれの接種時期と回数およびワクチンの種類を決定していきましょう。