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〔技術のページ〕

遊休農地放牧を始めませんか。

岡山県総合畜産センター和牛改良部生産技術科

 遊休農地に和牛を放牧する取り組みが県内各地に広がりを見せています。和牛放牧には,

 1牛舎内作業の軽減や飼料代の節減
 2遊休農地の管理の軽減
 3野生鳥獣害の減少

などのメリットがあります。
 そこで,今回は,遊休農地放牧の方法について紹介します。

 第1に,放牧する場所を確保する。

・牛舎に隣接または近い自己所有地からはじめましょう。
・牛が食べると中毒になったり,場合によっては死んでしまう植物もあります。他に食べる草が無いと食べる心配がありますので注意して下さい。
 例)キョウチクトウ,シキミ,ワラビなど。
・い草やノイバラなど好んで食べない草もありますので,残った草は刈り払いが必要です。

 第2に,飲み水を確保する。

・和牛は1日当たり最大で45リットル/頭(8月)の水を飲みます。
・水の確保の手段
 (1) 沢水の利用
 (2) 灌漑用水の利用
 (3) 軽トラックでの水の運搬利用
・かけ流しにすると周囲がドロドロになります。泥濘化を防止するため,必ず止水装置付きの飲水施設としてください。

 第3に,電気牧柵を設置する。

・牛が脱柵しないよう電気牧柵を張ります。
・設置手順は次のとおりです。
 @電気牧柵設置場所の刈り払い(約1m幅)
 Aポールの設置
  ポールの間隔は約5m程度
 B電牧線の敷設。電牧線の高さは上の線が約90cmになるようにクリップや碍子を設置します。外周は2〜3線張りとし,中を区切る場合は1線でも大丈夫です。四隅は牧柱とし,電牧線を固定します。

 Cゲートの設置
  出入り口も牧柱を使い,ゲートハンドルを使うと便利です。
 D電気牧柵機の設置
  電気牧柵機はアースをしっかりと取らないと電気が流れません。電牧線の途中に3〜4か所,縦にバイパスをつけましょう。

 E危険表示板の設置
  目立つところに危険表示板を必ず設置してください。
 F電圧のチェック
  電気牧柵で必要な電圧は3,000ボルト以上です。
  電圧が足りない場合は漏電箇所がありますので,次の箇所をチェックしてください。
  1)下草の接触
  2)牧柱等金属部分への電牧線の接触
  3)電気牧柵機のアース

 第4に,放牧する牛を準備する。

・電牧への馴致
 電牧未経験牛の場合,まず,牛舎に隣接した運動場があれば,その中に短く電牧線を張り,牛が自ら電牧に触ることで電牧線を認識させてやることが大切です。2〜3日で電牧線に近寄らなくなります。
・採草への馴致
 放牧未経験牛は青草の食べ方を知りません。まずは青草を刈ってきて給与してやりましょう。次に牛舎に近いところに繋いで自ら生えている草を食べることを覚えさせてください。
・放牧馴致
 初めは2〜3時間放牧して牛舎に戻し,次第に時間を延ばして徐々に慣らしていくことが必要です。
・放牧開始
 放牧は必ず2頭以上で放牧して下さい。1頭では脱柵することがあります。
 放牧期間は妊娠3か月から,分娩2か月前まで5〜6か月間とします。
 放牧未経験の牛は痩せ細る場合がありますので,牛の状態を見て退牧の判断をしてください。
・放牧期間の目安
 遊休農地での放牧は草種,草量,草丈により放牧期間が変わります。成牛1頭が1日に食べる草の量は体重の約10%です。
 (例:体重500sの場合50s/頭/日)
 10aあたり2頭放牧で7日間(草丈:短)〜14日間(草丈:長)程度です。
・退牧の目安
 牛が次のような状態の時は脱柵の恐れがありますので速やかに退牧させます。
 @牛が入り口近辺から離れず佇立している。
 A糞の量が少なくなり,ポロポロの糞をする。
 B人を見ると寄ってきて鳴く。
 C電牧線から頭を出して外の草を食べる。

 遊休地放牧の場合,放牧する牛がいかに草を食い込むか,また,決して脱柵することがないまでに電気牧柵を覚えているかが成功の鍵となります。このため,電牧への馴致,採草への馴致は必ず実施してから放牧へ出しましょう。
 また,放牧する場所の面積,草種,草量により利用できる期間が大きく変わってきます。早めに移動先の準備を行って下さい。
 遊休農地放牧の資材等は「モー大丈夫!放牧でいきいき遊休農地活用事業」等の補助事業がありますので,お近くの県民局,市町村畜産担当部署にお問い合わせ下さい。