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再認識 成鶏肉の美味しさ!

荒木 好鶏

 昔は鶏肉といえば成鶏の肉で,カシワと言われた。当時の食糧事情もあって結構美味しかったと思う。今は店頭で成鶏肉を見かけることが少なく,若鶏が全盛で,世間では若鶏が鶏肉の味となっている。また,鶏肉は安いが味がないといわれることもよく聞く。しかし,この春から成鶏の食鳥検査にたずさわるようになり,成鶏肉がたいへん美味しいことを再認識した。
 笠岡には,煮た成鶏肉をチャーシューの代わりに使った評判のラーメン店が何軒もある。鶏特有の歯ごたえやあっさりしてコクのある味わいがショウ油ラーメンとよくマッチするためだろう。
 成鶏肉は硬い(しわい)のが敬遠される主な理由であるが,飼育期間が長いため,肉が硬くなるのは仕方がない。ブロイラーでは60日程,地鶏では100日前後の飼育期間が多く,採卵鶏は1.5〜2年間の飼育された後,成鶏肉へ処理される。そのまま飼えば5〜7年間も産卵するものを,経済的な理由で,鶏の一生からいえば成長しきったときに肉にされるので,鶏肉本来のコクのある味を備えており,まずいはずがない。
 広辞苑にはカシワとは,美味しい鶏とか赤褐色の鶏と記されている。赤褐色の羽装の鶏の方が白い鶏より体重が大きく,脂肪もよく乗っており美味しいという人も多い。
 成鶏肉の料理について,いろいろな人に聞いてみると,酒好きの人は,細かく切った肉を塩と胡椒で炒めるか,塩焼きなど,シンプルなものが旨いという。子供がいる人は,煮込み料理やカレーのコクのある味は絶品で,下手な地鶏は足元にも及ばないという。また,年配の人には甘辛くコトコトと時間をかけて煮るとやわらかくて美味しいそうだ。
 試しに我が家でも,モモ肉と野菜のトマト味の煮込み,モモ肉の肉ジャガ風,カレー,野菜炒め等何種類かの料理で食べてみたが,和風味はもとより香辛料との相性もよく,2歳から91歳のわがファミリーであるが,圧力鍋等で調理すると肉も柔らかくなり,老若男女みんながたいへん美味しくいただいた。
 鶏の関係者として,皆様方にぜひ美味しく食べていただきたいので自慢の料理を2品紹介する。

1 成鶏肉のチャーシュウ風

 豚肉で作るチャーシュウ(焼豚)を鶏モモ肉で作るもので,鶏肉は味がしみこみやすいので,豚肉のよりかなりに薄味にしたものである。

 ■材料
 鶏モモ肉:1s
 ニンニク:2片
 ショウガ:50g程度 
 長ネギ:3本
 日本酒:500ml
 しょう油:200ml

(作り方)
@ニンニクとショウガをみじん切りにする。長ネギは5pほどに切る。
Aフライパンに油を引き,@を炒める。
Bキツネ色になったらモモ肉をその上に入れ,裏返しながら焦げ目がつくまで焼く。
CBを鍋に移し,日本酒としょう油を5:2の割合でモモ肉がひたひたにつかるまで入れ,20分ほど煮ると出来上がる。
(利用法)
@肉:薄く切り,ごはんのおかずはもとより,酒のアテや弁当に最適
A皮:肉から剥がした皮は細く切りそのまま食べてもよいが,ネギの細かく切ったものと一緒に炒め,さらにご飯を入れ炒め,Bの煮汁を少し入れ味を整えると美味しいチャーハンの出来上がり。
B煮汁:美味しい鶏のダシが出ているので,熱湯でうすめネギの細かく切って入れると,美味しいスープとなる。
  また,そのままうすめラーメンのスープとしても美味しいが,カツオやイリコでダシをとったものと併せると,行列ができる店顔負けの美味しいラーメンができる。
C脂:煮汁の上に浮いた脂も保存しておいて,炒め物をするときに少し混ぜるとか,お好み焼きのとき使うとコクのある味に仕上がる。

 成鶏肉は味が良いのに,流通量が少ないのためか,一般の人にはなじみが薄い。一般の人にもその良さを知っていただくとともに,美味しくいただいて鶏には天国へ行ってもらいたいものだ。

2 成鶏を使った美味し燻製の作り方

 わが家で一番評価が高かったのは燻製で,その作り方を紹介する。事前に数種類のレシピを見たが,一羽丸ごとを1週間位かけ作るものから,ムネ肉やモモ肉を利用し2〜3日で作るもの,また味付けや香辛料・燻煙剤の使い方もまちまちであった。
 わが家の鍋や冷蔵庫の容量から,一度に3羽位しか出来ないので,この容量の燻煙器をベニヤ板の廃材で作成し,また燻煙剤は薪を小さく割って使った。
 鶏は縦に2つに割ったものが手に入ったので,体積が少なく味付け時間が短いと思いこれを使った。

 ■材料          
 成鶏3羽
 (縦に2つに割ったもの、1羽約1.2kg) 

 ■調味液(3羽分)
 水:3リットル
 食塩:90g
 砂糖:30g 
 にんにく:3かけ(すりおろす) 
 しょうが:60g(すりおろす)
 こしょう:小さじ3
 オールスパイス:小さじ1.5 
 ナツメグ:小さじ1.5
 タイム:少々      

(作り方)
@塩 漬:肉をしめるため塩を全体に刷り込み数時間置く。
A味付け:上表の材料で調味液を作り,沸騰させ冷ましたものと,@をざっと水洗いし,腿等の肉厚の部分をホークや金串で刺し味を浸み込みやすくした鶏肉を,丈夫なポリ袋へ入れ,2〜3日冷蔵庫で寝かす。
Bボイル:味付けの終わった鶏肉を1羽毎ポリ袋へ入れ空気を抜き口を輪ゴムとじ,大鍋で70℃に保ちながら1時間ボイルする。(このときポリ袋内の残った空気は針で穴を開け抜くとよい。)
C乾 燥:燻煙器の中の七輪に炭をおこしておく。
 ポリ袋から鶏を取り出しペーパータオル等で水気を拭きとったものを竹の棒に吊り下げ,燻煙器の中で30分位乾燥させる。
D燻 煙:十分に乾燥したら,炭火の上に小さく割った薪をのせ燻煙する。このときは温度を70℃以上に上げないよう注意する。燻製の度合いは好みであるが,約2時間程度で完成する。

(簡単な燻製にチャレンジを!)
 ホームセンターのアウトドア用品売り場には,小さな燻煙器や燻煙材を売っている。モモ肉やムネ肉のブロック肉へ好みの香辛料を擦り込み,すぐに台所のガスコンロの上などで燻煙すると結構美味しい燻製ができるので,ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。