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〔家畜保健衛生所のページ〕

分割授乳を実施しましょう

津山家畜保健衛生所

1 はじめに

 朝夕は,めっきりと涼しくなり,とても過ごしやすい季節となりましたが,急な冷え込みや日中との温度差により体調を崩している方もいらっしゃるのではないでしょうか。豚においても同様で,特に子豚はストレスを受けやすく,急な温度変化は,呼吸器病や消化器病などの疾病を誘発する原因となります。そうでなくても子豚は,消化器官や体温調整機能などが未発達な状態で生まれてくることから,生理的要因による下痢を起こしやすい状態にあります。

2 初乳摂取の重要性

 生まれたままの子豚は,病気に対する抵抗力がほとんどありません。そのため子豚は,初乳を飲むことによって母豚から移行抗体をもらい,病原体から身を守ります。豚伝染性胃腸炎(TGE)や豚流行性下痢(PED)による下痢は,移行抗体により防御される良い例です。初乳は生後24時間以内(できれば12時間以内)に飲ませないと腸管からの吸収率が低下し,十分な移行抗体が得られなくなります。また,体の小さな豚は他の豚との競争に負けて,十分な初乳を飲めない場合があり,その後の成長に大きな影響を受けます。
 そこで,出生後,できるだけ早く,全ての産子に均等に初乳を飲ませることが疾病の予防のためには非常に重要です。そのために,分娩後24時間以内に十分に初乳を飲めるように分割授乳を試してください。

3 分割授乳の方法

 まず分娩柵内にコンテナ(段ボール等でも可)を用意し,そこに大きな子豚を入れ,小さな子豚が先に初乳が飲めるようにします。しばらくたって,小さな子豚が初乳を飲み終わったら,次に大きな子豚をコンテナから出して初乳を飲ませるように行います(図1)。
 夜間に分娩した場合は,翌日の朝および夕方の2回,日中に分娩した場合は,当日の夕方および翌日の朝,各1時間づつ大きい子豚をコンテナなどに閉じこめて,その間,小さい子豚に自由に初乳を摂取させます。


図1 分割授乳の実施風景

4 分割授乳の効果

 図2は,分割授乳未実施と分割授乳を実施した子豚について2日齢時に血清中IgG(初乳中の主な免疫成分)濃度を測定した結果です。
 分割授乳未実施の場合,血清中IgG濃度は21.8±9.4r/mlで21頭中4頭(18%)が初乳摂取不足である10.0r/ml以下であったのに対し,分割授乳を実施した場合22.8±5.4r/mlで個体間のバラツキも少なく10.0r/ml以下の個体は認められませんでした(岩手県中央家畜保健衛生所報告)。


図2 分割授乳の実施が血清中IgG濃度に及ぼす影響(岩手県中央家畜保健衛生所報告)

 また,分娩後の子豚は体温調節能力が不十分なので,保温ができていないと初乳を飲む活力がなくなってしまいます。そして,分娩後の子豚の最適温度は33〜35℃と言われています。分娩時には母豚の後にもヒーターを設置して,分娩直後の子豚の体温低下を防ぐようにしてください。

 分割授乳は全くお金がかからず,やってみれば意外と簡単で効果は絶大です。是非試してみてください。