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〔技術のページ〕

「おかやま黒豚」の食味と飼育期間

岡山県総合畜産センター 環境家畜部  森 尚之

 黒豚肉のおいしさは,肉の筋繊維が細かいため,食べた時に歯切れが良く柔らかいこと。肉の保水性が高いので,しまりのある肉質で水っぽさがなく,うまみ成分のアミノ酸の含有量が多いこと。脂肪の溶ける温度が高いため,脂がベトつかず,さっぱりしていることです。また,脂肪部分にも十分なうまみがあり,食感も優れているのも大きな特徴です。
 岡山県では,昭和53年に鹿児島県からバークシャー種の種豚を導入して以来,生産振興を図ってきました。また,平成8年度から3年間にわたって原産地であるイギリスから優良種豚を導入し,さらに高品質な黒豚の生産に取り組んでいます。現在の年間生産頭数は約3,500頭です。総合畜産センターでは,黒豚の生産農家に優良種豚および人工授精用の液状精液を供給し,さらに,消費者においしい黒豚肉を食べていただけるように,特徴ある飼養方法の検討を通して「おかやま黒豚」の振興に努めています。
 「おかやま黒豚」の振興については,トレイサビリティーなど安全性システムの確保や食味性の向上による高品質化がポイントとなります。特に食味性に関与する要因としては,飼料,品種,性別,と畜日齢およびと畜後の処理方法などが考えられます。一般に,中型種であるバークシャー種は,一般豚(LWD交雑種)よりも成長が遅いため,と畜日齢は遅くなります。そこで,よりおいしい「おかやま黒豚」の生産技術を開発するため,と畜日齢と食味性の関連について,一般に行われている200日齢と畜から,30日遅らせた230日齢,60日遅らせた260日齢でと畜を行い,豚肉の肉質形質を理化学的及び物理的に調査しました。

T 方   法

 供試豚は,総合畜産センターで飼養している5頭のバークシャー種繁殖雌豚が分娩した子豚のうち,60日齢で良好な発育を示す去勢豚15頭を3試験区に配置し8.2uの豚房で3頭の群飼を行ないました。給与飼料は,一般的な飼養管理を想定して市販配合飼料を制限給餌し,水は自由飲水としました。試験区分は,と畜日齢を1区(200日),2区(230日)および3区(260日)の3区分としました。

U 結果および考察

1 肉質分析成績

 胸最長筋(ロース芯)の粗脂肪含量は1区が3.75%,2区が4.12%,3区が3.68%であり2区が高くなる傾向がみられました。近年,筋肉内脂肪含量の低下は豚肉の硬さを増し,風味や多汁性を減少させ,2.5%以下だと味が劣り,一方,筋肉内脂肪含量が増すと柔らかさ,風味,多汁性といった食味が向上するとの報告があります。今回,全ての試験区で胸最長筋の粗脂肪含量が2.8%以上であったことは,いずれの試験区も食味性に優れた豚肉であったと考えられました。破断応力は1区が54.98kgw/f,2区が49.36sw/f,3区が56.77sw/fであり,2区が低くなる傾向がみられました(表1)。これらの成績から,2区の豚肉が1区および3区より柔らかく食味性に優れた豚肉であると考えられました。

表1 肉質成績

2 発育およびと体検査成績

 試験終了時体重は,1区が118.8s,2区が128.3s,3区が137.8sであり,3区が1区に比べて有意に大きくなりました。また,1日平均増体量は,1区が682.0g,2区624.9g,3区が587.0gであり,今回の試験では3区が1区に比べて有意に小さくなりました(表2)。山口らは,出荷体重と正肉歩留りを調査し,出荷体重は100sから110sにするのが得策であると報告しています。そして,今回の2区および3区の試験終了時体重から推定される枝肉体重は(社)日本食肉格付協会の豚枝肉取引規格の上物の範囲を越えており,重量大により格落ちとなることが考えられました。ロース断面積は1区が19.5f,2区が21.4f,3区が22.6fであり,肥育期間が長くなるにつれて大きくなる傾向がみられました(表3)。

表2 発育成績

表3 と体検査成績

 今回の試験成績より,バークシャー種去勢豚(おかやま黒豚去勢豚)は,230日齢程度でのと畜により,胸最長筋(ロース芯)の粗脂肪含量が高くて,柔らかい食味性の優れた肉質になることが推測されました。しかし,飼育期間の延長による出荷時体重では,豚枝肉取引規格の上物の範囲を越えており,重量大により格落ちとなることが想定されるので,今後,肉質,生産収支などを考慮した試験が必要と考えられます。