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〔消費者のページ〕

消費者の食肉の購買動向と安全に対する意識について

社団法人岡山県畜産協会

 国内外でのBSE,鳥インフルエンザ等家畜疾病の発生や表示の不適正等から消費者の畜産物に対する信頼感,安心感が揺るがされておりましたが,生産から消費にいたる関係者の相互理解が進展しつつあり,畜産物に対する信頼感は次第に回復してきております。
 当協会では,食肉に対する消費者の意識を把握し,より一層の信頼関係を築くために種々の調査を行っておりますが,昨年度に行った消費者アンケートのなかから食肉に対する調査結果を報告いたします。

1.調査の対象(図1)

 社団法人岡山県婦人協議会,岡山県消費生活問題研究協議会の会員から推薦いただいた女性の方々等で,200名の方から回答をいただきました。回答者の構成は年齢別には,50〜60歳代が67%で,40歳代以下の方は15%と年齢構成のバランスには多少の問題はあるかと存じますが,高齢化の進む現状から消費の中心的存在の方々から回答が得られたと考えております。

2.食肉の畜種別購入状況(図2)

 購入頻度の最も高い食肉については多い順に豚肉(36%),鶏肉(32%),牛肉(31%)でしたが大きな差はなく,牛肉消費の西高東低,豚肉消費の西低東高といった食習慣は薄れて,食肉をうまく組み合わせて食卓を飾っている様子がうかがわれました。

3.食肉の購入頻度について(図3)

 1週間に1回〜2回買われる方が牛肉では全体の64%,豚肉では73%,鶏肉は54%で,週に1〜2回は利用されている方が多いようです。
 月に1〜3回買われる方が牛肉36%,豚肉27%,鶏肉46%で,概して1回あたりの購入量も多く,まとめ買いをしているものと思われます。

4.1回あたりの購入量について(図4)

 1回あたりの購入量は500g未満の人が牛肉61%,豚肉68%,鶏肉60%と購入したものは1〜2日で使用するものと推察されます。
 1回あたりの購入量500g以上は,まとめ買いをする方,家族人数の多い家庭ではないかと思われます。

5.100gあたりの購入単価(図5)

 牛肉では500円未満が77%,豚肉は200円未満が52%,鶏肉については150円未満が約56%を占めている。

6.よく買われる部位(図6)

 牛肉,豚肉ではバラ,モモ,ロースの順でカタが敬遠されているようで,調査は行っておりませんが,よく買われる部位から推察すると焼き肉やステーキ等の利用が増加し,すき焼き等の薄切り利用が減少してきているように思われます。

7.食肉の産地意識(図7・8)

 食肉の購入に際しほとんどの方が産地を意識しており,牛・豚・鶏肉いずれの食肉でも国内産を求めており,その内半数以上の方が県内産を求めているようです。
 外国産の購入は2%以下にとどまっております。

 このことは,BSEや高病原性鳥インフルエンザの発生等から安全に対する意識高揚の表れであると考えられますが,食肉の供給状況からみると,今回の調査が産地へのこだわり意識の強い熟年層が多かったための結果ではないかと思われます。

8.よく買う食肉の種類(図9)

 牛肉については和牛と答えた方が90%,豚肉では一般の豚肉と答えた方が49%,黒豚肉が39%,鶏肉は地どりと答えた方が47%,若鶏が41%という結果でしたが,やはり回答者が量より質にウェイトを置かれる熟年層が多かったためであろうと考えられます。

 なお,県内産の食肉を買うと答えた方の県産食肉のブランド名の知名度は「おかやま和牛肉」は62%,「おかやまポーク」41%,「おかやま黒豚」45%「おかやま地どり」33%,「岡山桃太郎地どり」28%で,「おかやま和牛肉」の知名度は比較的高いものの,豚肉,地どり肉では知名度が今一歩低く一層のPRが必要であると思われました。

9.食肉の購入先(図10)

 いずれの食肉についても,複数回答であり,単純に総数を分母として計算したものではありますが,スーパーマーケット(牛肉47%,豚肉48%,鶏肉52%)が予想どおり圧倒的に多く,食肉の種類により多少の差はあるものの専門店,生協,Aコープでの購入が15%前後でした。

10.食肉に対する安全意識

 (1) 国産食肉に対する安全意識(図11)
 国産は安全であるという意識は高く,牛肉で78%,豚肉で83%,鶏肉で66%の方が安全だと思うと回答されました。このことは牛肉についてはBSE全頭検査,牛・豚肉のと畜場における衛生検査が評価されていると思われます。

 鶏肉については,高病原性鳥インフルエンザの発生等による不安から安全であるという意識が牛・豚肉に比べやや低い結果となったものと考えられ,人に感染のおそれのある家畜伝染病に対する正しい情報提供の重要性がうかがわれます。

 (2) 輸入食肉に対する安全意識(図12)
 輸入食肉に対しては“安全性に不安がある”“安全かどうかわからない”と答えた方が牛肉94%,豚肉92%,鶏肉97%であり,安全性に疑問を持っているようです。

 このことは,米国におけるBSE発生後の対策,東南アジアを中心とする高病原性鳥インフルエンザの人への感染例,外国の生産に関する情報の不足等が起因しているものと考えられますが,安全性に対する意識については,各年齢層を等分に構成した調査を実施する必要があると考えております。

11.牛肉の個体識別番号表示等の認知度,利用状況

 (1) 牛の個体識別番号表示(図13)
 牛肉に個体識別番号が表示されていることを知っている方は,66%とまだまだの感があります。また,これを牛肉の生産履歴確認に利用している方は“時には利用する”を含め,わずか8%でほとんど利用されていないのが現状のようです。

 (2) おかやまモーモーランド(図14)
 岡山県が独自に県産牛肉の生産履歴をより詳細に伝えるためのホームページ“おかやまモーモーランド”を知っている方は17%とまだまだ浸透度が低い状況にあります。また、知っている方の利用状況についても,“時には利用する”を含めて21%と低調な結果でありました。このことは,個体識別番号表示の利用度を含め,インターネットによる情報提供ということもあり,やはり調査対象者が熟年層中心となったことも起因しているのではないかと思われます。

 以上食肉に対するモニターアンケートについてその概要をご紹介いたしました。
 消費者の方々は,家畜から人へ感染する危険性のある疾病や偽装表示問題,更には残留農薬問題等から食料の安全・安心への意識が高まってきておりますが,今回の調査でも食の安全に対する意識が十分に読み取れました。
 しかし,調査対象の年齢構成がやや偏ったこともあり,この調査が全てを表しているとは考えておりません。
 更には,食肉の需給動向,外食産業の動向等からみると,安全・安心に対する意識と実際の購買,消費にずれがあるようにも思われます。
 これからも生産から消費にいたる関係者相互の理解を深めるための活動や研修会等を行うとともに,県内産畜産物の情報提供等に努めてまいりたいと存じます。
 また,今後もモニターを活用した調査を続けてまいりたいと考えておりますのでよろしくお願いいたします。
 今回の調査報告が消費者の皆様方の少しでもお役に立てば幸いに存じます。