ホーム>岡山畜産便り > 岡山畜産便り2005年11・12月号 > 〔普及の現場から〕簡易曝気処理施設の取り組み |
平成16年11月に本格施行された「家畜排せつ物法」では,家畜ふん尿の適正な管理と有効利用が求められています。
そのような中で,畜産農家はふんについては堆肥化を行い良質堆肥を生産,販売しており,尿処理については尿貯留槽に貯留後,ほ場に液肥として利用する方法が主流となっています。しかし尿散布時の悪臭等の発生から,近隣住民からの苦情が寄せられることも少なくありません。
そこで,散布時の悪臭軽減策として,津山市酪農組合では,既存の尿貯留槽を曝気槽として活用する簡易曝気処理施設に取り組んでいるので紹介します。
津山市では市街化が進み,尿をほ場散布する際に近隣住民から苦情が寄せられることがあります。酪農家は散布時の天候,散布時間には常に気を配っている状況です。
尿の浄化処理については,回分式活性汚泥法,連続式活性汚泥法など様々な種類が紹介されていますが,いずれも高額で最低でも400万円以上かかり,堆肥舎を設置したばかりの酪農家にとってこれ以上の経費をかけられないことから臭気対策がとれませんでした。
そんな折り,鳥取県の農業改良普及員から超低コストな施設事例の紹介がありました。これは,既存の尿溜槽を曝気槽として活用したもので,臭気の少ない液肥を生産,利用するすることを目的としています(処理水を放流することはできない)。製造コスト及びランニングコストとも非常に安い(設置費用20万円,ランニングコスト4千円/月)ものと聞き,早速鳥取県に視察訪問しました(鳥取県畜産試験場方式)。
鳥取県方式の施設は,ブロアー,散気管(デヒューザー)と配管のみと非常に簡易なものでした。一つは20頭規模の酪農家で20万円,もう一つは繁殖母豚100頭規模の養豚農家で,中古FRPサイロを活用し曝気槽を4槽設置していました。臭いの発生も少なく,ほ場散布するには何ら問題のないものでした。
視察後,早速3戸の農家が既存の尿溜槽を曝気槽に改造しました(1戸は尿を投入せず)。設置施設とその費用は表1のとおりです。普及センターでは岡山県総合畜産センターにも協力要請を行うとともに設置後経時的に調査を行い,状況を見守りました。
結果,尿を処理した2戸のうち,1戸の農家では設置して6ヶ月後の11月,活性汚泥が形成され上澄みを液肥利用しました。
設置した2戸の農家ともにほ場散布時の悪臭も軽減され,「満足」できるものとなりました。
また,津山市では飼料稲を栽培している農家も多いことから,岡山県総合畜産センター試験結果をもとに処理水を液肥として活用(10aあたり1tを目安に投入(窒素量:2.77s/10a))し,散布時の臭気の発生も少なく,収量が増加できるなど一定の成果も上げることが出来ました。
施設写真 |
泡の状況 |
実施に当たっての留意点を列挙すると,
@十分な曝気槽が必要
→中古FRPサイロを活用し曝気槽を増設。
A溶存酸素量の確保
→散気管を増やす。24時間連続曝気の実施。
B放流には不適
C曝気初期におけるアンモニアと泡の発生
→泡発生時,食用油を添加。
Dバンクリーナーで固液分離された汚水のみ
→フリーストール牛舎の固液分離は高BOD負荷なので不適となります。
活性汚泥
今年度,酪農家4戸が中心となり任意組合を設立,施設の設置,液肥の利用に取り組んでいます。今後,普及センターでは岡山県総合畜産センター,おかやま酪農協等,関係機関の協力を得ながら,来年度には再度飼料稲に利用し,生産・利用体系の確立支援を行っていきたいと考えています。