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〔畜産農家の声〕

「和牛がとりもつ仲間たち」

新庄村 福井 孝子

 私の住んでいる小さな村では,大きな産業もない昔には,どこの家でも門を開けると牛が顔を出し,えさを食っていたものです。だんだん世も変わり,今では,ほんのわずかになってしまいました。でも,私はこの村には牛が,最適な場所に思えるのです。
 別に私は牛を飼うつもりで嫁いだわけでもなかったのに,夫・幸平の指導が良かったのか,私の動物好きのおかげもあって,とうとう一途に牛飼いになってしまいました。
 私と夫とは,作業を分担しています。私の仕事は,五頭の親牛の世話と生まれた子牛が離乳するまでの管理です。私たちのような中小の牛飼いは,(冬場は雪ですので仕方ありませんが)夏場は毎日草を寄せてくるのが日課です。田の畦とか,山道,色々な所を刈って,きれいになると満足です。近所が草を刈ると,私が請け負いのように全部集めて回ります。近所の人にも,草を取ってあげると,喜ばれます。畑仕事や家事もあって,草刈りで遅くなる毎日です。近所の人が,「マムシが出るでー」とか,「よう恐くないなー」とか心配して呆れます。私は一生懸命で,早く帰ろうとか,恐ろしいことなど,思う間がありません。毎日毎日忙しいばかりです。
 夫は,我が家や他のところで採卵した受精卵で,乳牛の腹を借りて生ませてもらった子牛をたくさん育てています。生まれ落ちたその日から夫が親代わりです。夫は私の言う事より,子牛優先です。
 子牛市に行くと,真庭の牛飼いの顔ぶれに出会います。いつの頃からか,真庭の牛の好きなもの同士がグループを結成し,夫婦で参加するようになりました。視察旅行や,年の暮れには勉強会のあと,一堂に寄り集まって,好きなお酒・ビールと,おしゃべりです。それだけではありません。子牛市が終わるごとに,最高値で売った家が昼食をふるまうようになったのです。それが,不思議なことに,損をした気持ちより「こんども自分が自分が」と,闘志を燃やすのです。仲間と食事をし,勉強になる話や他愛のない話,色々です。楽しく語らい,気持ちよく帰路につきます。
 仲間と日頃会えば,身内のような気さえします。でも,共進会では良きライバルとなり競い合います。今回,県共進会で我が家の牛がグランドチャンピオンに輝いた時,どれほど和牛仲間が,「おめでとう」と,握手やら,ことばをかげてくれたことか…。私は,牛もさることながら,仲間や,関係者の方々に対して,これまでになく感謝の気持ちでいっぱいになり,心温まり,涙しました。
 しかし,感動も冷めやまぬ間に,家に帰れば,また,あれやこれやと動き回り,仕事が絶えることはありません。苦労の連続です。でも,仲間がいるから,一人ではないのだ,と頑張れるし,幸せとも思える今日この頃です。


愛牛の管理にいそしむ孝子さん

今年度の県共グランドチャンピォン牛
「しんふく55」号