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〔県民局だより〕

家畜ふん尿堆肥への理解を求めて

備中県民局畜産班

 家畜排せつ物法管理基準規制の完全施行に伴い,畜産農家はふん尿処理施設を整備し適正管理を進めてきました。しかし,畜産農家の規模拡大にともない自己所有地のみでは利用しきれない状況が発生しており,有機肥料として流通し,有効に活用されなければ環境問題は解消されないことは言うまでもありません。
 備中局(旧倉敷局)管内では,畜産農家が少ないこともあり,生産された堆肥は自家利用の他,地域の野菜や果樹農家への販売,養鶏では主に袋詰めでの広域流通がなされており,おおむね適正に利用されているものの,一部農家では十分に販売できないため草地への過剰施用も見られます。しかも,今後更にし尿汚泥の堆肥化,食品リサイクル法による食品残渣の堆肥化等が進むと,家畜ふん尿堆肥の利用が低下し,新たな環境問題が発生することも危惧されます。
 そこで備中局(旧倉敷局)では,本年度新たに18農家に特殊肥料の製造・販売届を行わせるとともに,倉敷地区畜産振興協議会(管内市町と県で構成)を事業主体として,堆肥利用ネットワーク活用事業により,堆肥の流通促進に取り組んでいます。
 事業の内容と目的は@「家畜ふん尿堆肥の施用効果と利用事例」を作成し配布することにより,耕種農家に堆肥の良さと利用方法を理解してもらう。希望者には一戸当たり2トンの堆肥を無償提供し,堆肥の有効性を実感してもらうとともに,地域の農家に口コミでPRしてもらうことにより,新たな需要を開拓する。A農産物直売所において,小規模農家や消費者に100円で45L袋に自ら堆肥を詰めて持ち帰ってもらうことにより,汚いと敬遠されがちなふん尿堆肥の概念を払拭すると共に,有機農産物への理解を深めてもらう。同時に堆肥マップを配布したり直売所に配置することにより,堆肥の利用拡大を図ることとしています。
 直売所での堆肥販売は4回計画しており,こまでは2トンの堆肥が概ね3時間で完売するという盛況です。販売を行っていると,野菜や果樹農家から堆肥利用の利点や問題点など,様々な情報を得ることも出来ます。また,家庭菜園を行っている消費者からは,堆肥の使い方について初歩的な質問がなされ,堆肥の利用についてまだまだ理解されていないことが伺われるものの,なごやかな会話の間には良質堆肥を生産するコストや労力についても話をし,少しでも畜産に理解を深めてもらうように努めています。
 これらの取組は,草の根的なささやかな取組であり,直ちに堆肥の利用拡大につながるものではないかもしれませんが,耕種農家や消費者の畜産や堆肥,そして有機農産物への理解が深まり,畜産の健全な発展と資源循環型社会形成の一助になればと願っています。

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