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〔共済連だより〕

鳥獣害にご用心

岡山中部家畜診療所 前原 健成

 ある酪農家でちょっと変わったものを見ました。写真の動物は何でしょうか。 豚?それとも新種の動物? 正解は,生まれた翌日に牛舎内で狸に鼻端を噛み切られたホルスタインです。出生まもなく繋留されていたために逃げることもできず狸の思うままに攻撃されていた姿を想像すると,身の毛もよだつ気がします。幸いにも一命をとりとめ,もうすぐ種付けができるまでに成長しました。
 鳥獣害といえば水稲や野菜など農作物の被害がクローズアップされがちですが,最近は,畜産分野でも被害の報告が多くなっているように思います。私が,今までに経験した症例を少し挙げてみたいと思います。
 12ヶ月の育成牛が柵にはさまれ身動きできない状態になっているところを狸に眼や耳・鼻を10数箇所咬まれ虚脱状態になり,治療の甲斐なく死亡した例や子宮脱や膣脱を起こしている牛が狸に咬まれ出血多量で死亡した例。流産しているようだが胎児が見当たらず牛舎内を探していると点々と血や粘液の跡が牛舎外まで続いているが発見できなかった例。夕方死亡したため処理を翌日にするため牛舎外に出しておいたところ半身白骨化にされた例。どちらも犯人は狸か?
 烏による被害もあります。出生まもない子牛が腹部に穴を開けられ腸を引き出された例。乳房や乳静脈を突かれ最悪出血多量で死亡した例。ラップサイロに穴を開けられ変質・腐敗し給与できなくなる例のように直接・間接的に被害を出しています。また,何十羽と群れ飛ぶ烏は近隣住民に不快感を与えます。また何十羽と群れ飛ぶ鳩を見るのは優雅ですが牛体や牛舎内は糞公害の嵐。
 猪による牛体への直接の被害は聞きませんが牛舎内外を走り回り,資材などを撒き散らしたり,生えそろったばかりの牧草地を掘り返したりと間接的な被害もあります。皆さんもいくつか思い当たる被害があるのではないでしょうか。さらに,猫から感染したと思われるノミの寄生により衰弱した子牛や,最近問題となっている牛に流死産を引き起こすネオスポラ症にも犬だけでなく,野生動物の関与が指摘されています。
 最近では,岡山市内のかなり市街化された場所にある農場でも野生動物を見ることがあります。なぜこのようになったのでしょう? 杉や檜の人工造林の増加による彼らのえさの減少や山の手入れがされず人家のすぐそばまで茂みとなったり,放棄耕地の荒廃化などで人家と山との境界が非常に接近していることが指摘されています。しかし,一番の問題は牛舎内外が野生動物にとって最高の餌場になっていることではないでしょうか。動物にとっても自然の中で少しの餌を探すより牛舎に居ついてしまうほうがずっと楽だということを学習してしまったのかもしれません。牛舎内外には餌となるものは山とあります。
 いろいろな防除法が考案されていますが根本的な解決策がないのが現状のようです。特に烏は新しい方法を試しても効果は最初だけですぐ慣れてしまう。まずは牛舎内外の整理・整頓。動物の餌となるものを排除し飼料庫は動物の侵入防止策をすることだと思います(牛の盗食防止にもなります)。最初の農家は牛舎周囲にネットを張ったところ最近では狸の侵入は無くなったとのことです。また,ネオスポラ症対策には,胎盤や死亡子牛の埋却には十分な深さを確保する必要があります。最後にトラバサミを設置して捕獲されている方がいます。トラバサミはホームセンターや金物店で簡単に購入できるようですが,厳密には甲種狩猟免許が必要で猟期も決まっており,違反者には懲役1年以下もしくは罰金50万円以下が科されるそうですのでご注意を。